News Letter No.45 - May 2006 -
 
 学会印象記 
第1回JPOSサイコオンコロジストのための講習会に参加して

東京大学大学院
医学系研究科 ストレス防御心身医学
東京大学医学部附属病院 心療内科
冨久尾 航


 第1回サイコオンコロジストのための講習会は、2006年3月4日東京駅近くの丸ビルにて開催されました。ふだんの丸ビルは大勢のオフィスワーカーで賑わっていますが、その日は休日の早い時間だったため人出はまだまばらでした。買いもの目的で訪れるときには感じたことのない緊張感を覚えながら講習会場へと向かう途中、心理士として働いている友人と偶然出会い、少しほっとしながら、受け付けを済ませました。
 講習会場に入ると、ポットサービスのコーヒーの香りが漂う中、すでに何人かの参加者が着席していました。受け付けでもらった名簿をみてみると、医師が11名、心理士が6名、看護士が3名とありました。医師のうちわけは、私と同じ心療内科医は1名のみで、他は内科医が2名、緩和ケア専門医が1名、精神科医が6名でした。アウェイの緊張感が抜けない私とは対象的に、私の友人は、スタッフの先生と顔見知りだったからでしょうか、随分とリラックスしているようでした。
 定刻通りに講習会ははじまり、まず内富庸介先生よりサイコオンコロジーの概観についての講義がありました。続いて、岩満優美先生よりがん患者の心理反応と心理面接の基本について、明智龍男先生よりがん患者の抑うつについて、秋月伸哉先生よりがん患者のせん妄についての講義があり、どれも非常に充実した内容で、あっという間に昼食の時間となっていました。
 話はいったんそれますが、私の所属する東大病院心療内科では、血液内科無菌病棟にて移植患者さんを対象としたコンサルテーション・リエゾンサービスを行っています。未熟ながらも日々がん患者さんの不安や抑うつに接しながら感じることは、がんとこころの関係は、やみくもに情熱だけで扱うのではなく、学際的かつ科学的に扱うことが必要で、また重要だということです。その一方で、論文や教科書を読んで得られた知識が、自分の情熱と結びついて臨床でうまく表現されているのかという思いもありました。そのような折りに今回の講習会の情報を耳にし、何かのきっかけになればと参加を申し込みました。
 午前中の講義で、サイコオンコロジーに関するエビデンスをからめた実践的な方法をまとめて聞いた後は、私のなかにあった漠然とした緊張はすこしずつとけはじめていました。
 午後には佐伯俊成先生より家族への対応について、下山直人先生よりがんの痛みのマネジメントについて、大西秀樹先生より終末期医療における精神医学的緒問題についての講義がありました。午前中と同様に実践的で、具体的な問題点について踏み込んだ内容であり、聴きごたえのあるものでした。講義が終わった頃の会場は、心地よい脱力感に包まれていました。
 講義に続いて、各職種に分かれてのグループワークがありました。私は、精神科以外を専門科とする医師のグループに加わることとなり、「道は違えど思いは同じ」であることを確認するよい機会となりました。
 講習会が終了した頃にはすでに夕刻を過ぎていました。ふだんどおりに賑わう丸ビルを出て、近くの居酒屋で懇親会が行われました。いつの間にか、私のなかにあった緊張はなくなっていて、私は心理士の友人と同じかそれ以上にリラックスしてその場を楽しんでいました。そして家路につくに頃は、これからのがん患者のこころのケアに向けた一層の意欲がわいていました。その日のお酒がすっかり抜けた今も、その一層の意欲を持ち続けております。