News Letter No.45 - May 2006 -
 
 学会印象記 
“悪い知らせを伝える”コミュニケーション技能講習会に参加して

大阪医科大学附属病院 呼吸器内科
藤阪保仁


 現在、我が国においては約2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんのために命を落としています。このため、臨床の場においては、がんの告知、進行がんや再発であること、積極的な抗がん剤治療の中止などの“悪い知らせ”を患者様とその御家族に伝えなくてはならない場面が、確実に増加しています。抗がん剤治療を適切に安全に行なっていくスペシャリストとして平成18年春、日本初の“がん薬物療法専門医”も誕生し、今回参加したコミュニケーション技能講習会には、全国からオンコロジストの8名が国立がんセンター東病院に集まりました。
 2日間に渡って行われた講習会の目的は、医師が悪い知らせを伝える際に、患者の意向に基づいたコミュニケーション・スキルを習得することにありました。初日の講義では、SHARE(S: Supportive environment, H: How to deliver the bad news, A: Additional information, R・E: Reassurance and Emotional support)の内容を理解し、その後ロールプレイを2日間にわたり行いました。ロールプレイのシナリオも良く練られたものですが、初めての私は模擬患者(SP)は普段接する患者以上に患者らしくみえ、緊張すると同時に驚きもしました。まさに、診察室その中にいる気持ちとなりました。ロールプレイとdiscussionを通じてSHAREプロトコールに基づいたコミュニケーション技能の習得を目指しました。臨床経験豊かな先生からまだ外来経験の無い先生・内科医・外科医など多彩なバックグランドを持つ先生方が、“悪いことを伝える”という一つの目標に向かって議論を展開しました。ファシリテーターから適切なアドバイスを貰いスムーズに行えたと思います。
 私自身、国立がんセンター中央病院でレジデント・がん専門修練医と5年間多くのがん患者に接し現在大学では呼吸器腫瘍を中心に診療に当たっていますので、インフォームド・コンセント(I.C)に関しては自信を持っていましたが、この講習会を通じあらためて自分のICを見つめ直すことが出来ました。望ましいコミュニケーションには言葉だけではなく、表情や姿勢、身振り、語気、語調といった非言語的なメッセージの重要性を再認識しました。また、伝えたい内容を言葉で言ったとしても、その患者と“共有”しなければ“伝わった”とは言えません。今後も、このことを常に注意して患者と接したいと思います。
 参加者全員が“悪いことを伝える”のみならず、“悪いことをどのように伝えるか”という意識を持つことが出来、この素晴らしい講習会を終えることが出来たものと確信しています。