News Letter No.45 - May 2006 -
 
 学会印象記 
平成17年度JPOSコミュニケーション技能訓練講習会に参加して

市立砺波総合病院 外科、緩和ケア科
善成


 近年、癌診療の場のみならず医療全体においてinformed consent(IC)の重要性が叫ばれ、以前の「お任せ医療」から「納得ずくの医療」への転換が図られています。
 また、臨床の場において多くの疾患に関する診断や治療のガイドラインが示されるようになり、患者様、医療者側双方が情報を共有することが可能となってきました。しかし事実を患者様に「伝え」なければ情報を共有することはできません。癌診療の場においては癌の告知に始まり、再発、積極的抗癌治療の中止、予後不良であることといった「悪い知らせ」を伝えることは避けて通ることはできません。
 私は主に消化管の癌を扱う外科医であると同時に緩和ケア病床で治癒が見込めない癌患者様と共にいる緩和ケア医でもあります。私自身、以前から「悪い知らせ」を伝える際に困難を感じるとともに、コミュニケーション不足から生じると思われる医療者側と患者様、ご家族とのすれ違いを多く経験してきました。医療者が効果的なコミュニケーションを実践することによってこのような問題が少しでも解決できないかと考え、今回の講習会に参加させていただきました。
 講習会は2月25日(土)、26日(日)の2日間、国立がんセンター東病院にて行われ、全国から癌診療に携わる8名の医師が集まりました。この講習会の目的は「悪い知らせ」を伝える際のコミュニケーションスキルを習得することでした。初日のコミュニケーションに関する総論とスキルの骨子となるSHARE(Supportive environment, How to deliver the bad news, Additional information, Reassurance and Emotional support)プロトコールについての短い講義以外は、プログラムの大部分の時間がロールプレイに当てられました。ロールプレイは医師役1人が模擬患者に対し、悪い知らせを伝える面接を行い、オブザーバー(残りの参加者)、ファシリテーター(進行役)とともに問題点を見つけ解決策を見いだす仮想体験学習です。他人に自分の面接を見られるというのは大変恥ずかしいものでしたが、よく練られたシナリオと模擬患者さんの迫真の演技のおかげで、まるで本当の診察室で本当の患者様を相手に面談しているような気持ちになり、次第に引き込まれていくのがわかりました。面談は最初から最後まで通して行うのではなく、適切な場面でファシリテーターの判断で中断がなされ、そのつどSHAREプロトコールに基づいての検証が行われました。参加者の間では診療科やキャリアの違いを越えて、「悪い知らせをいかに伝えるか」について熱い議論が展開されましたが、ファシリテーターの適切なアドバイスのおかげでまとまりある解決策を見いだすことができました。
 今回の講習会に参加して強く感じたことは、コミュニケーションスキルは確かに「スキル」ではありますが、実は医療者としての患者様に対する姿勢そのものではないかということです。我々には患者様に真正面に向き合うこと(はぐらかさないこと、嘘をつかないこと)、気持ちを理解すること、共感的に接すること、気持ちを支えることが求められています。 このことを肝に銘じ、講習会の内容を今後、外科診療、緩和医療の両面に活かしていきたいと思います。
 最後になりましたが、当日お世話になりました関係者の皆さんに厚くお礼申し上げます。