News Letter No.45 - May 2006 -
 
 Journal Club
「進行期がん患者に認知される重症呼吸困難に対するモルヒネの補助治療としてのミダゾラムの効果」

県立広島病院 緩和ケア科
小原弘之


Navigante AH, Cerchietti LC, Castro MA, et al
Midazolam as adjunct therapy to morphine in the alleviation of severe dyspnea perception in patients with advanced cancer.
J Pain Symptom Manage. 2006 Jan;31(1):38-47.

【背景】
 呼吸困難は、進行期がん患者の治療で最も難渋する症状の一つである。予後が数週になれば、呼吸困難の頻度と重症度が増加し、終末期の深い鎮静が必要となることが先行研究で明らかになっている。オピオイドとベンゾジアゼピン系抗不安薬の併用は、特定の状況下では安全とされているが、呼吸抑制を理由に使用されない場合が多い。本研究は推定予後が1週以内の進行期がん患者の重症呼吸困難に対して使用したモルヒネに補助療法としてのミダゾラムを使用した単盲験無作為化比較試験の報告である。
【方法】
 がん進行期で推定予後が1週以内、認知障害がないECOGのPS4で安静時呼吸困難を認める患者を対象にした。認知機能など適格条件を満たした患者は無作為に3群に分けられた。薬剤はすべて皮下に投与され、モルヒネ群(Mo群)はモルヒネ2.5mgもしくは定期量に25%増量した量が4時間毎に分割投与され、呼吸困難発作に対してミダゾラム5mgが追加された。ミダゾラム群(Mi群)はミダゾラム5mgを4時間毎に投与し、モルヒネ2.5mgを追加した。モルヒネとミダゾラムの併用群(MM群)では定期のモルヒネとミダゾラム5mgを4時間毎に投与し、モルヒネ2.5mgを追加投与した。効果は0-10のBorg scaleを用いて開始前、24時間後、48時間後に評価した。さらに呼吸困難の緩和の有無、臨時投与が必要な呼吸困難発作の回数、酸素飽和度、副作用等を評価した。
【結果】
 適格患者はMo群、Mi群、MM群に各々35名、33名、33名が振り分けられた。呼吸困難の重症度の中央値は各々の群で開始前の8、8、7.5から2、2、2に有意に軽減した。24時間後の評価では各々の群で69%、46%、92%に呼吸困難の緩和を認め、MM群が有意に高かった。48時間後に呼吸困難が緩和しなかった患者の割合は各々12.5%、26%、4%でMM群では呼吸困難の緩和に高い奏効率を示した。試験を完遂した患者の酸素飽和度の平均値は開始前から48時間後まで70-73%で推移した。臨時投与が必要な呼吸困難発作の回数は、MM群が最も少なかった。Grade2以上の急性副作用は17例で、傾眠が最も多かった。
【結論】
 モルヒネとミダゾラムを併用した群では、呼吸困難発作の回数が減少し、呼吸困難が緩和しなかった患者の割合も少なくなっており、ミダゾラムの併用が呼吸困難に対するモルヒネの効果を増強する可能性が示唆された。
【コメント】
 本研究は終末期がん患者を対象にした臨床試験で、各群で48時間以内に10名以上が死亡し酸素吸入やステロイド投与を受けない状況で行われていることから、バイアスや倫理上の問題が含まれた結果と思われる。しかし臨床試験の実施が困難な推定予後が1週以内の終末期がん患者の重症呼吸困難に対して比較的規模の大きい比較試験でミダゾラムの効果を評価している点は興味深い。