News Letter No.45 - May 2006 -
 
 Journal Club 
Are you at peace?"(心は安らかですか?):終末期のスピリチュアルな問題の1問の質問によるアセスメント

東京大学大学院 成人看護学
緩和ケア看護学
佐藤一樹

Steinhauser KE, Voils CI, Clipp EC, Bosworth HB, Christakis NA, Tulsky
JA. "Are you at peace?": one item to probe spiritual concerns at the end
of life. Arch Intern Med. 2006 Jan 9;166(1):101-5.

【背景】
 終末期患者のスピリチュアルな苦悩を尋ねることは医師の役割であるのか、限られた時間内でそのようなことを実践できるのか、と医師は疑念を抱くことがある。しかし、終末期患者のスピリチュアルな事柄が重要であることは明らかにされており、スピリチュアルな問題を話し合える医師−患者関係がケアの質を向上させる可能性がある。
 本研究の目的は、進行期患者から得られた量的データを用いて、「心が安らかである(being at peace)」ことと他の尺度のスピリチュアリティやQOLのドメインとの関係を調べ、「心が安らかである」ことの概念構造を探索することである。
【方法】
 VA1施設、大学病院1施設でケアを受ける進行期のがん、心不全、COPD、腎不全患者を対象として質問紙調査を行った。調査項目は、筆者らによる終末期患者のQOL尺度であるQUAL-E(31項目、4ドメイン)、FACT-G(27項目、5ドメイン)およびスピリチュアル面を測定するモジュールであるFACIT-Sp(12項目、1ドメイン)、老年者を対象とする大規模疫学調査であるEPESEの社会的サポートの下位尺度(13項目、2ドメイン)、患者背景である。QUAL-Eの1項目が「心が安らかである」程度を5段階で尋ねている。
【結果】
 320人にリクルートし、248人より回答を得た。男性が59%、年齢の中央値が61歳、がん患者が56%であった。
 「心が安らかである」ことは、年齢と弱い相関がある(r=0.24)こと以外に患者背景と有意な関係はなかった。「心が安らかである」ことは、FACITの5ドメインと有意に関連し、情緒面とスピリチュアル面が最も相関が強く(r=0.52、r=0.60)、身体面、機能面、社会面/家族面は中〜弱い相関であり(r=0.28、r=0.35、r=0.41)、スピリチュアル面の下位ドメインである信仰と目的は同程度の相関であった(r=0.47、r=0.51)。「心が安らかである」ことは、社会的サポートの2ドメインである手段的サポート、情緒的サポートのいずれとも有意な関連はなかった。
【考察】
 「心は安らかですか?」という質問は、幅広い対象に適用できる、全般的な概念を示す項目であることが示唆された。信仰やスピリチュアルに関する問題は多くの患者にとって重要で、意思決定にも影響を与える一方で、患者は気軽に会話できる事柄ではないと受け止めていることが先行研究により示されている。患者に「心は安らかですか?」と尋ねることで、スピリチュアルな問題をアセスメントする簡単なツールとなる。
【コメント】
 "Are you depressed?"や"Have you lost interest?"と尋ねる抑うつの単項目の質問によるスクリーニング法は、日本においても有用性が確認されており、本論文でSteinhauserらにより提唱されたスピリチュアルな問題の簡便なアセスメント法も、日本において応用できる可能性がある。ただし、今回、"being at peace "を「心が安らかである」と訳したが、日本と欧米との文化の違いを考慮した日本人のスピリチュアルな問題に合う質問項目の検討が必要である。