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神奈川県立がんセンター精神科
大西秀樹
近年、多くの総合病院には精神科医が配置されており、地域医療の中核を担った精神科診療を行なっている。精神科医が複数配置されている病院もあるが、一名のみの配置であるところも多い。
精神医療のニーズは高く、朝から夕まで外来診療が続くことも稀ではないが、その間にも病棟からのコンサルトに答えたりして忙しい時を過ごすのが現状である。さらに、外来を終えるや否や病棟診察が待ち構えている。一日の外来診療を終え、精神的・肉体的疲労がたまった状態で合併症を抱えた患者の精神医学的な診察はかなりの負担であり、医療ミスの温床ともなる。ミスの出ないように疲れた体に鞭打って細心の注意を払いながら診療を続けている。
総合病院でいわゆる一人医長として働く場合、これらの仕事を一人で毎日続ける事になる。体調が悪く休むかどうか考慮する場合も代診はないので体調の悪いまま診察を行なったことがある精神科医もいるであろう。相談する相手もないので、不安を抱えたまま診療を行うことも稀ではない。診療システムの不備が見え隠れする。
このように、現在の総合病院での精神医療は多くの精神科医の善意と無私の行為および不安を抱えながらの診療によって成り立っているのも現状である。このシステムではいつの日にか破綻することは見えている。これは患者さん、病院、そして精神科医にとり将来的な希望のないシステムである。
平成14年から緩和ケア診療加算が導入され、一定の基準を満たしたチームには診療上の報酬が加算されることになっている。今まで善意のレベルで行なわれた診療に対して、患者さんのケアの大切さ、それは診療上の報酬を上乗せしても余りあるものであるということが認められたことを意味する。
日本の緩和ケアチームの特徴は精神科医が加わることが必須となっている。このことはがん患者の精神医学的有病率が高いこと、これらを放置することは患者さんのメリットにならないこと、したがってがんの診療に心のケアが必須であることを示している。
緩和医療学会の調査によれば現在110の緩和ケアチームがあることに対して、緩和ケア診療加算をとっているのは40チームほどであると言われている。精神科医の参加が得られないことが要因の一つとして挙げられている。
精神科医はそれ程までに不足しているのであろうか?それとも我々精神科医の努力不足であろうか?
緩和ケアチームを作り、診療上の報酬が手厚くなったとしても精神科医が一名では忙しさの度合いに変化はない。逆に書類、会議が増えて疲労が増すのみである。
緩和ケア診療加算の診療報酬が手厚くなっているのは常勤精神科医を病院に招聘することを可能にするための方策でもある。精神科医を複数名採用し、一名は主に外来、もう一名は主に病棟の担当とすれば役割分担が明確になり、外来および病棟診療の内容が充実し、患者さんにとってメリットであるばかりでなく、医師の負担軽減、医療ミスの減少などにもつながっていくのではないかと考えている。診療報酬上も外来医は通院精神療法、病棟医は緩和ケア診療加算などで保障されている。
精神科医が複数になることでお互いの意見交換が可能になり、一人で高度な判断を行なう不安の軽減にもつながり、単独で働くよりもより多くの力が発揮できるはずである。
今後総合病院でのサイコオンコロジー・リエゾン精神医学が継続的に発展していくためには、上記に挙げたようなシステムの構築が不可欠である。継続して働きやすく、やりがいのある職場には精神科医も集まってくるのではないだろうか。
精神科、身体科を問わず、諸先生方のご尽力によりサイコオンコロジーの必要性が理解されるようになってきた。今後はこれらの火を絶やさないためのシステム作りが求められていくことであろう。また、適切なシステムをとる病院は将来的にサイコオンコロジーの継続的な発展が期待できると考えている。実際に上記のようなシステムをとり始めたり、準備している病院もあるようなのでそのような病院の方々に私達は敬意を払うとともに、そこでの活動を参考にしていく必要があると考えている。
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