News Letter No.44 - Feb 2006 -
 
 Journal Club 
子供をがんで亡くした親の負担:デンマークにおける全国調査

国立がんセンター中央病院精神科
岡村優子


“Care-related distress: a nationwide study of parents who lost their child to cancer”
Kreicbergs U, et al.
Journal of Clinical Oncology 23: 9162-71, 2005

【背景】
 子供を亡くすことは著しくストレスの高い出来事と考えられる。子供の病気が治癒不可能なものである場合、両親は特に不安定で子供の受けるケアにさらに影響を受けるかもしれない。今回がんで子供を亡くした親の長期的な苦悩をもたらすがんに関連したストレス因子について検討した。
【方法】
 対象:スウェーデンにおいて、17歳以前に悪性疾患の診断がなされ、25歳以前に亡くなった(1992〜1997年)368人の子供を同定した。親の適格基準は、悪性疾患診断時の保護者、北欧の出身、公表された電話番号があること、スウェーデン語を理解できることであり、適格者は561人であった。家族に連絡を取る前に主治医から了解を得、全家族について了承が得られた。2001年8〜10月に母親・父親それぞれ別に研究についての説明文を送付し、その後電話で参加依頼した結果、531人が了承された。
 質問紙:質問紙は子供と死別した7人の保護者とのdepth interviewをもとに作成された。Face validityを15人の保護者で評価し、pilot studyを22人で行い、修正した。質問紙には子供へのケアについての考えや死別後4〜9年間の精神状態について365項目含まれている。子供がケアを受けていた期間中に親が経験しうるストレス因とフォローアップ期間中に特殊なストレス因が親に影響を与えているかどうかに焦点をあて、「下記に亡くなった方の親類の方にありうる経験や思い出の例(12例)を示しています。これらの中にあなたが経験されたことがありますか。あれば、そのことによって現在も影響を受けていますか。」と質問している。返答は「関係なく、経験もなし」、「現在は何の影響もない」、「現在でも少し影響がある」、「現在も中程度影響がある」、「現在も多大な影響がある」の5つである。
【結果】
 449人(80%)から回答が得られた(男性:43%、女性:56%、不明:2%)。ストレスフルな出来事は9-46%の頻度で経験されていた。父親・母親合わせて頻度の高かったものは、「軽減されなかった痛み」45%、「子供への怠慢なケア」46%、「子供の死後医療者とのコンタクトが不十分であった」43%であった。軽減されなかった痛みがあったと報告した親の57%(111/196)、亡くなる時苦痛を伴っていたと報告した親の57%(78/138)で現在も中等度以上の影響がみられていた。
 「亡くなる時苦痛を伴っていた」と報告していたことと有意な関連がみられたのは「人口50万人以上の都市に住んでいること」(RR=1.7, 95%CI 1.1-2.7)、「心配なことを他の人と分
かち合ってないこと」(RR=1.5, 95%
CI1.1-2.3)、「子供のがん診断前1年
間の不安」(RR=1.6, 95%CI1.2-2.3)、
「亡くなる時医療者がいなかったこと」(RR=1.4, 95%CI1.0-1.8)であった。「軽減されなかった痛みがあった」と報告したことと有意な関連がみられたのは「亡くなる時医療者がいなかったこと」(RR=1.3, 95%CI1.6-3.3)、「親自身病気で休職中、もしくは退職していること」(RR=1.6)であった。
【結論】
 死別した両親の長期的な苦悩を軽減させるために、小児がんの終末期ケアにおいて疼痛コントロールの改善と亡くなる時の苦痛の軽減が重要な二つの課題である。