News Letter No.44 - Feb 2006 -
 
 Journal Club 
幹細胞移植のために入院中の血液腫瘍患者の患者評価による感情および身体機能

東京大学医学部心療内科
吉内一浩

Patient-rated emotional and physical functioning among hematologic cancer patients during hospitalization for stem-cell transplantation.
Prieto JM, et al. Bone Marrow Transplantation 35:307-314, 2005

【背景および目的】
 悪性、良性に関わらず、血液疾患の治療法として造血幹細胞移植は標準的な治療のひとつになってきているが、この治療法は、侵襲的であるので、患者のQOLに多大な影響を与える。これまでの造血幹細胞移植患者のQOLに関する研究の多くは、移植後1〜10年後という長期予後に関するもので、入院期間中に焦点を当てたものはほとんど存在しなかった。従って、本研究では、同種および自家造血幹細胞移植のための入院期間中の心理的、身体的機能に関する前向き調査のデータを提供することと、これらの2種類の移植が心理的、身体的機能に与える影響を比較することである。
【方法】
 対象は、1994年7月から1997年8月までの間にスペインのバルセロナの病院に入院した患者から募集した。組み込み基準は、血液悪性疾患で、16歳以上、初めての造血幹細胞移植であった。同期間中に移植を受けた253名中、235名が基準を満たしたが、最終的に研究対象となったのは、220名(93.6%)であった。入院後48時間以内に最初の面接を行い(T1、day -9〜-4)、その後、移植当日(T2、day0)、1週間後(T3、day+7)、2週間後(T4、day+14)に評価を行った。評価法は、全般的な身体状態尺度(overall physical status scale)、過去1週間のエネルギーレベルの減少度(energy level scale)、全身症状尺度(systemic symptom scale)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いた。

【結果】
 全症例を対象とした解析では、HADSの不安得点に関しては、T1においてもっとも高く、その後、低下していく傾向が認められたが、抑うつ得点に関しては、全般的は身体状態の悪化と一致してT1からT3にかけて上昇が認められた。同種移植と自家移植の比較では、全身症状尺度においてグループの主効果が認められ、全般的な身体症状尺度と過去1週間のエネルギーレベルの減少度においてグループと時間の交互作用が認められ、いずれにおいても自家移植の方が良好であるという結果であった。不安と抑うつに関しては、両群間で有意な差は認められなかった。
【コメント】
 入院期間中の身体機能および心理状態を検討した研究は、これまで少なかったので、本研究は、造血幹細胞移植患者の入院期間中のサポートを行う際に有用な情報を提供するものである。