News Letter No.44 - Feb 2006 -
 
 Journal Club 
造血細胞移植後のがん患者の死亡率の予測におけるうつ病(診断)の役割

名古屋市立大学看護学部
石黒千映子



“Role of Depression As a Predictor of Mortality Among Cancer Patients After Stem-Cell Transplantation”
Prieto, JM. Atala, J. et al.: Journal of Clinical Oncology, 23(25), 6063-6071, 2005.

【背景と目的】
 うつ病とがん患者の死亡率との関連について、多くの先行研究では関連性があると報告している。造血細胞移植(SCT)は、非常にaggressive かつdemanding な治療法であり、患者の身体・精神に深く影響する。SCT後の死亡は、移植後3年間が大多数を占めるが、最も急な生存率の低下が移植後1〜2年に認められることから、うつ病とSCT後早期/中期/長期死亡率とは密接に関連していると考えられる。そこで、本研究において、うつ病とSCT後1、3、5年の死亡率との関連について検討した。
【対象と方法】
 1994年7月から1997年8月の間にSCT目的でバルセロナの大学関連病院に入院した、血液悪性腫瘍の16歳以上の患者を対象とした。
 うつ病のアセスメントは、DSM-IVを用いて行われ、面接は、入院時とSCTから退院もしくは死亡まで、毎週実施された。また、入院時にKarnofsky performance status score を用いて身体的な障害の評価が行われたほか、退院後に医学的診断、検査結果、バイタルサインズ、向精神薬治療、Bearman Regimen Toxicity Scaleの評価、入院中の患者の精神的な状態に関連があると思われる診療および看護記録が抽出された。Consensus diagnostic meeting は2ヶ月ごとに行われ、DSM-Wチェックリストを含む全てのデータをもとに議論された後、2人の精神科医(研究者)によってうつ病が鑑別された。
 死亡率のデータは、医師記録の検索と追跡調査によって得られた。全死亡報告は、主治医によって証明された。
【結果】
 SCT後90日以上生存した患者199名から、4つの連続した時期(入院時,day0,day+7,day+14)でのDSM-Wによるアセスメント781件が得られた。これら199人のうち、18人(9.0%)が大うつ病、17人(8.5%)が小うつ病と診断された。
 multivariate Cox's regression models
では、大うつ病が1年後と3年後の死亡率を予測することを示したが(1年
後:hazard ratio[HR],2.59;95%
C1,1.21-5.53;p=0.014、3年後:
HR,2.04;95%C1,1.03-4.02;p=0.041)、5年後の死亡率では示さ
れなかった(HR,1.48;95%C1,0.76
-2.87;p=0.249)。小うつ病は、どの年数にも影響しなかった。
 他の変数では、regimen toxicityが1、3、5年後の死亡率、高齢と急性リンパ性白血病が3、5年後の死亡率、慢性骨髄性白血病が3年後の死亡率、Karnofsky performance status score <90とIntermediate/high-risk status、Peripheral-blood stem cellsが5年後の死亡率の予測に有意であった。
【結語】
 大うつ病は、SCT後1、3年の死亡率を予測することが示され、大うつ病の早期評価と治療は、臨床的に重要であることが明らかになった。5年後の死亡率との有意性を見つけるにはサンプル数が少なかったため、より大きいサンプルで検討する必要がある。早期評価と治療が長期生存率に寄与するかについては明らかではないが、health care outcomes の向上や患者の苦痛の軽減、QOLの向上の可能性を有している。