News Letter No.43 - Nov 2005 -
 
 海外報告記 
Kornblith博士の研究室を訪ねて

東京理科大学 理学部教養
田崎美弥子


 私はこの夏ハーバード大学付属病院のマサチューセッツ綜合病院(MGH)精神科で2ヶ月ほど研修を受けさせていただいた折に、ハーバード大学の癌研究所であるDana-Farber Cancer InstituteのWomen’s Cancer Programにあるサイコオンコロジープログラム長をされているAlice B.Kornblith博士をワシントン大学のCarol Moinpour博士のご紹介をうけて、訪問させていただくことができました。
 Dana-Farber Cancer Instituteはチャールズ河を挟んで、ハーバード大学の文科系学部が集中するケンブリッジの対岸にあたるLongwoodと呼ばれる医学部や付属病院が固まっている地域の一角にあります。研究所といっても外来患者が出入りし、フレンドーな明るい雰囲気で、壁紙には患者のためのヨガ講座やスピリチュアリティケアの案内が数多く張り出され、一階奥には患者のためのリソースセンターが存在しました。Dana-Farber Institute は全米でも有数の癌研究所の一つで、あらゆる癌に対応するユニットが存在します。Kornblith博士はニューヨークのご出身で、ニューヨーク市立大学で博士号を授与され、Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerなどを経て、2001年からハーバード大学医学部公衆衛生学の上級研究員を兼任し、Women’s Unitのサイコオンコロジープログラム長に任命されました。今までにThe Cancer and Leukemia Group B(CALGB)のサイコオンコロジープログラムの共同研究者として、また複数の癌専門病院やMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerで長年にわたって、Quality of Life研究を実施されてきました。
 その研究内容は多岐にわたるものの、主にPhaseIIIの癌患者さんや長期生存者を対象にQOL研究を行ってこられたそうです。QOLは治療にあたって、非常に重要なアウトカム指標と考えられているそうで、常に癌専門医だけでなく、医療チームの一員として治療方針や治験などの調査にも必ず参加されているということでした。最近のご研究では、女性の癌患者とその配偶者が癌について話をする際の困難さを調査する研究や、高齢者の胸部癌、大腸癌、前立癌患者をわずらった患者さんのストレスを調査するために、月一回電話をするモニターを行い、ある基準以上のストレスを受けている患者さんには、即座に癌疾患専門の看護師が必要な情報や必要な治療の手配をするといったことを続けてきた結果、モニターを受けている患者さん群は、教育的な癌情報だけ与えられている患者さん群と比較すると、統計的に有意に健康状態とQOLが良い状態であったということです。この研究は高齢者の癌患者さんに非常に感謝され、しかも良い研究結果が出すことができて何よりでしたとおっしゃっていました。日本ではあまりQOL研究を臨床の場で測定することはありませんが、Kornblith博士は、癌患者のQOL評価をすることで、医師や患者は、治療の結果としての生存率やQOLを考えたうえで、どのような治療が必要であり、選択をすべきであるかといった情報を与られるし、QOLの結果は患者のQOLが高い治療介入を開発する際の良い指標になるとも話されていました。

Kornblith博士   ハーバード大学 図書館
ハーバード大学 図書館
Kornblith博士    
癌研究所   Dana-Farber Cancer Institute
Dana-Farber Cancer Institute
癌研究所