| 第4回「がん患者さんの性を支援するための研修会」実施報告 |
東京大学大学院医学系研究科
健康学習・教育学教室
渡邊 知映, 高橋 都
本研修会は医療現場で従来取り上げられることが少なく、性について相談しにくい背景のある女性がん患者の性に焦点を当て、がん治療がセクシュアリティへ及ぼす影響の基礎知識と性相談の基本的スキルを学習することを目的とし、毎年開催している。
本稿では2005年9月25日に東京大学内で実施した研修会の実際について報告する。受講者は、臨床看護師28名、看護教育関係3名、医師2名、作業療法士1名の合計34名であった。
1.女性の性反応−総論
・ Masters & Johnson による人間の性反応の四相(興奮期・高原期・オルガズム期・消退期)とそれに伴う身体的変化
・ DSM-・による性機能不全分類、FSD(Female Sexual Disorders)分類
2.がんと性に対して、一般医療者ができること・するべきこと
・ がん発病後の性に影響する諸要因:心理面・身体面・パートナーとの関係性
・ 性欲と性感の相互作用
・ 基本的性相談の受け方としてのPLISSITモデル
・ 医療者による性相談とサポートの可能性
3.がん種類別各論
・ 婦人科がんの各治療で生じうる性機能障害(妊孕性、卵巣機能、性欲障害、性的興奮の障害、膣潤滑液の減少、オルガズム障害、性交障害、性交痛など)と対処法
・ 乳がんの治療法と各治療で生じうる性機能障害と対処
4.当事者に聞く「がんと性」
「子宮がん・卵巣がんのサポートグループあいあい」を主宰されている、まつばらけい氏をゲストに迎え、対談形式で当事者が考えるがん治療と性の問題についてお話し頂いた。サポートグループでの話し合いや相談業務の中で、広義での性に関する問題の占める割合は大きいが、問題解決には至っていないケースが多いことや医療者の不適切な言動により傷ついた事例が多数あることが提起された。具体的内容については、1)術後の性生活に具体的にどのような影響が出るのか不安だが、医療者からの説明がない、2)治療後の性的合併症への危惧が治療方針の選択に尊重されなかった、3)性交痛など実際に起こった性的合併症について、4)女性性の喪失、5)パートナーとの関係性の変化など多岐にわたっていた。医療者に求める支援については、1)性に関する情報提供は婚姻状況や年齢を問わず、全ての患者さんに対して行って欲しい、2)必要に応じて相談できるというサインを出して欲しい、3)医療者の治療後の性に関する知識の向上、4)安全な(プライバシーの確保、差別・偏見を持たない、性の多様性の理解等を前提とした)相談の場の提供などが挙げられた。
4.基本的セックスカウンセリング技法講義・ロールプレイ
患者さんとの面接時に得るべき・与えるべき情報と面接で気をつけることに関する講義の後、5、6人程度の小グループに分かれ、受講者が2名ずつペアになり、事前に用意されたシナリオの状況に沿って患者役と医療者役の両方を演じるロールプレイを行った。
5.グループ討議「自分の職場で何が出来るかを考える」
自分の職場で実施可能なアイディアについてブレインストーミングを行った。具体的には研修会の内容をスタッフに伝達する、性に関するパンフレットを作成する、婦人科など他科や外来など関連部署との連携を密にするなど様々なアイディアがあげられた。
6.国内外の各種リソースの紹介
研修会終了後に行った研修会の内容についてのアンケート調査からは概ね9割の受講者から高い評価を得られ、今後の本研修会への要望として、治療後に性交障害が生じた場合の具体的な対処方法や他の悪性疾患におけるセクシュアリティの変化についてなどが挙げられた。本研修会が、がん治療に携わるものにとって、がん治療後のQOLの一要素として性の問題に自然体で取り組めるきっかけとなり、支援のあり方の具体的示唆を与えられるものとなることを望む。
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