| がん治療に対する正しい認識に関連する社会学的要因の検討 |
国立がんセンター東病院精神腫瘍科
清水 研
Sociodemographic Determinants of Cancer Treatment Health Literacy
Gansler T, Henley SJ, Stein K, et al.
Cancer 2005;104:653-60
【背景と目的】
がんの発生率、病期分布、生存率、死亡率は民族、人種間で異なり、主な原因として、予防、早期発見、治療を含めた良質のケアへのアクセスの違いがあげられている。健康に対する行動が異なる背景には収入、教育、医療保険の状況といった社会的格差に加えて、健康、疾病に対する信念の違いの存在が示唆されているが、未だ検討は不十分である。
【対象と方法】
2002年に米国がん学会はPrevention magazine、Discovery health Channelとの協力のもと、教育プログラム作成の為の調査を行ったが、本研究はそのデータを用いたものである。アメリカ合衆国に居住する2497人をランダムに電話番号から抽出し、研究参加を働きかけた。約半数の1254人が調査に同意し、うち1002人が最終的に質問を完了した。更にがんの既往がある45人を除いた957人が今回の調査対象となった。
調査は今回作成した質問表注1 に基づいており、その内容はがんの危険因子、診断、治療に関する質問と、対象者の社会的要因に関するものである。今回の検討では次の5つの誤解、・がんによる痛みは治療に反応しない、・がんに打ち勝つには治療よりも前向きな姿勢が重要である、・がんを手術すると悪性細胞が体中に散らばる、・医療産業は利潤追求のために治るがんをわざと治さない、・がんに効果的な治療法はない、に焦点を当てた。5つの質問のそれぞれについて誤答は1点、わからないとこたえた場合は0.5点とし、合計点(0〜5)を従属変数として、ロジスティック回帰分析を用い、性、人種、年齢、教育歴、収入、がんの家族歴、がんに関する知識量の主観的評価、居住地域といった要因との関連を検討した。
【結果】
5つの質問すべてにおいて誤答を選択しなかったのは全体の約4分の1であった。5つの質問に関する誤答の平均点は1.3であり、高学歴、高収入は正答と関連し、非白人、65歳以上、南部居住者、がんに関する知識量が少ないとの主観的評価が誤答と関連した。
5つの質問のうちもっとも誤解が多かったのは「がんを手術すると悪性細胞が体中に散らばる」で、回答者の41%が正しいと考えていた。2番目に誤答が多かったのが「医療産業は利潤追求のために治るがんをわざと治さない」であり、27%が正しいと答えた。「がんによる痛みは治療に反応しない」に関しては回答者の68%が適格に否定し、「がんに打ち勝つには治療よりも前向きな姿勢が重要である」は89%が同意しなかった。「がんに効果的な治療法はない」は87%が間違っているという答えを選んだ。
【結論】
5つの誤解のうち、3つに関しては誤答率が見過ごせないレベルで高く、様々な社会的因子が関連していた。このことは適切な治療を受けることの阻害因子であり、がんの罹患率や死亡率の上昇と関連するかもしれない。
注1:信頼性、妥当性に関しては不詳である。
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