News Letter No.43 - Nov 2005 -
 
 Journal Club 
「がん性呼吸困難に対するモルヒネ吸入法と皮下注法の比較」

県立広島病院 緩和ケア科
小原弘之


Bruera E, Sala R, et al: Nebulized versus subcutaneous morphine for patients with cancer dyspnea: a preliminary study. J Pain Symptom Manage29(6):613-618,2005.

【背景】呼吸困難は、がん進行期にしばしば耐え難い苦痛を伴う症状となるが、多くの場合その発生機序は不可逆的であり、症状緩和の治療が必要となる。がん性呼吸困難の治療としてモルヒネの全身投与の有効性が報告されているが、経口的もしくは経静脈的に投与した場合に眠気や認知機能の障害がしばしば観察され、効果を得るための充分量を投与できない場合がある。最近モルヒネの吸入療法の有効性が報告されており、効果発現時間が早いことや方法が簡便であることから、ホスピスや在宅療養においても吸入療法は注目されている。本研究はがんの進行に関連した呼吸困難に対するモルヒネの効果を皮下注法と吸入法で比較することを目的に行った二重盲験無作為化比較試験の結果である。
【方法】原発性肺がん、肺転移、胸水、がん性リンパ管症などがんの進行が呼吸困難に関連し、安静時呼吸困難が3/10以上で、経口的もしくは経静脈的にモルヒネが投与されている患者を対象にした。モルヒネは換算比に従って4時間ごとに内服しているモルヒネ相当量の半量を皮下注量もしくは吸入量とした。患者は1日目にモルヒネ吸入後に生理食塩水を皮下注する群とモルヒネ皮下注後に生理食塩水を吸入する2群に無作為に振り分けられ、2日目には反対の治療をcrossoverして受けた。患者は2日間連続で呼吸困難の程度を治療4.5時間後まで0-10の11段階で評価し副作用の評価と合わせて行い、投与方法の希望を試験終了時に選択した。
【結果】適格患者15名中11名が2日間の治療を受け、治療60分後の呼吸困難の評価では、モルヒネの皮下注後に5から3に、モルヒネの吸入後に4から2に有意に改善した。投与法による呼吸困難の改善の程度に有意な差は認められなかった。副作用はモルヒネ皮下注法で眠気が多く観察された。11名中、6名は吸入モルヒネを希望し、皮下注法を希望したのは3名であった。
【結論】今回の結果は登録症例数が少ないため、投与方法による効果の違いは明らかにできなかった。本試験は比較的軽度の呼吸困難を対象にしたため、この結果を一般化することはできないが、モルヒネ吸入法が皮下注法と同様に呼吸困難を改善する効果があることが示唆された。本試験では有害事象は観察されず、吸入法が興味深い投与方法であり、今後別のオピオイドの吸入や吸入オピオイドの生物学的活性などの研究が必要である。持続性の呼吸困難や早期の呼吸困難の患者を対象にした大規模な無作為化比較試験が望まれる。