乳がんに伴う二次性不眠に対する認知行動療法の有用性:無作為化比較試験
Part 1: 睡眠及び心理的側面に関する効果 |
名古屋市立大学大学院医学研究科
精神・認知・行動医学
奥山 徹
Randomized study on the efficacy of cognitive-behavioral therapy
for insomnia secondary to breast cancer, part I: Sleep and psychological
effects.
Savard J, Simard S, Ivers H, Morin CM.
J Clin Oncol. 2005 Sep 1;23(25):6083-96.
【背景】
がん患者において、不眠は30%?50%程度の患者に出現する、頻度の高い症状である。また不眠は患者のQOLを損なうことが知られており、特に慢性的に続くときには積極的な治療が必要である。不眠に対する心理的介入の効果は、原発性不眠、慢性疼痛による二次的不眠、身体的・心理的原因による二次的不眠においては示されているが、がんに関連した不眠に対する効果は報告されていない。
【対象】
乳がんのT期からV期の患者のうち、1ヶ月以前に化学療法及び放射線療法を終了しており、かつ睡眠障害に関する国際分類及びDSM-IV診断基準による慢性睡眠障害の診断基準をみたすものを対象とした。重篤なうつ病を有する患者などは除外した。
【方法】
患者を無作為に介入群と待機群に割り当てた。介入群に対しては、週1回90分、4-6人のグループによる認知行動療法を8週間行った。介入は、行動療法(睡眠制限、睡眠を妨げるような刺激物を避けることなど)、認知療法(認知の再構成など)、教育(睡眠衛生、倦怠感やストレスへの対処方法)などを、資料を配布しながら施行した。介入終了後1ヶ月後に1回のみ、booster
sessionを用意した。待機群は少なくとも8週間待機をした後、介入群へ導入された。
介入効果は、Insomnia Interview Schedule (IIS)、Polysomnography、Insomnia
Severity Index、睡眠日記、Hospital Anxiety and Depression Scale, Multidimensional
Fatigue Inventory, EORTC QLQ-C30などを介入前、介入後、3、6、12ヶ月後に施行して評価した。統計解析は介入群と待機群間での比較、及びpooled
data(介入群と待機群のデータを合わせたもの)を用いた解析の双方を行った。
【結果】
160名の適格基準を判定した結果、58名が適格であり、28名が介入群に、30名が待機群に振り分けられた。ベースライン時点では2群間に大きな差は認めなかった。12ヶ月後までに介入群で12名、待機群で5名の患者が脱落しているが、解析はIntention-to-treat解析で行った。
待機群と比較して、介入群では有意な睡眠の自覚的な改善、睡眠薬内服の頻度の低下などを認めたが、Polysomnographyでは差を認めなかった。臨床的に意義のある状態を「睡眠日記において有効睡眠(ベッドの中にいる時間に占める実質的な睡眠の割合)85%」と定義すると、pooled
dataを用いた結果では、治療前にこの基準を満たす患者は13%であったが、治療後は53%にまで増加し、その後もこの割合は増加し、12ヶ月後には65%に達した。また介入によって、抑うつや不安、QOLの改善を認め、その効果は12ヶ月後まで保たれていた。
【考察】
認知行動療法は、がんによる二次的な不眠においても有用であり、またその効果が長期にわたって保たれることが示された。不眠は臨床上過小評価されやすい症状のひとつであるが、積極的にスクリーニングを行い、適切な介入を行うことが望まれる。
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