| 「小児がん治療中の子どもを持つ親の心的外傷後ストレス症状について」 |
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
心療・緩和医療学分野
小林未果
Posttraumatic Stress Symptoms During Treatment in Parents of Children
With Cancer
Anne E Kazak, C Alexandra Boeving, Melissa A. Alderfer, Wei-Ting
Hwang, and Anne Reilly
Journal of Clinical Oncology, Vol.23, No.30,2005,pp7405-7410
【背景と目的】小児がん治療中の子どもを持つ親を最大限サポートするために、両親の苦痛を、より理解する必要性が高まっている。これまでの研究結果からは、子どもががんと診断されることにより、親の不安や抑うつ症状は高まり、診断後1年経過するまでにストレスは徐々に低下し、適応していくと言われている。しかし、不安・抑うつが、がんに関連した苦痛を全て表すわけではない。近年では、小児がん生存者の両親から、子どものがん治療に伴うPTSS(心的外傷後ストレス症状)の訴え(フラッシュバック、過覚醒状態、外傷を想起させる活動や状況の回避など)が増えている。本研究では、小児がん治療中の患児の両親におけるPTSSについて、またPTSSが治療内容や診断からの期間と関連しているかどうかについて調査した。
【対象と方法】小児がん治療中の患児の母親(199名、平均年齢38.1歳)および父親(52名、平均年齢41.7歳)に、自記式質問紙PTSD-RI(Posttraumatic
Stress Disorder Reaction Index、20項目)およびIES-R(Impact of event scale-revised、22項目)を記入してもらった。また2名の腫瘍医が、患児の治療プロトコール、治療法などをもとに、治療強度を4段階に分類した。患児の疾患の内訳は、白血病56.0%、悪性リンパ腫8.8%、固形腫瘍26.4%、脳腫瘍11.2%で、診断から調査までの期間は2.5ヶ月から44.3ヶ月であった。本調査で得られた結果を、同じ病院で治療し、治療後1-10年経過した小児がん生存者の両親のグループのデータと比較した。
【結果】PTSD-RIについては、母親の68%および父親の57%が中等度から重度のPTSSを報告した。両親共に参加した家族のうち79.2%(38家族)は、少なくとも片方の親が中等度から重度のPTSSを示していることが分かった。また、現在治療中の子どもを持つ母親のほうが、がん生存者の母親と比較して有意に高い苦痛を報告しており、過去1週間にフラッシュバック、過覚醒状態、外傷を想起させる活動や状況の回避の症状が多くあったことが明らかになった。診断からの期間とPTSSについては、母親においては有意に負の相関(r=
-0.23、P=.02)が見られたが、父親においては有意な相関は見られなかった(r= -0.25、P=.07)。
【考察】小児がん治療中の患児の両親にPTSSはよく起ることが明らかになった。今後、子どもが骨髄移植を行っている、集中治療や侵襲の強い治療を受けているなどの親に対しては、認知行動療法や家族療法などの心理社会的介入を積極的に取り入れるなどして、子どもが治療を受ける辛さにより適切に対処できるようにサポートする必要があるであろう。
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