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北里大学医学部精神科
宮岡 等
昭和大学病院
樋口比登実
第10回日本緩和医療学会、第18回日本サイコオンコロジー学会合同大会のワークショップ「緩和ケアチームの活動評価」(2005年6月30日)に加わり、また緩和ケアフォーラム(同日)を聞いて、少し気になることがあった。
あるがんの患者さんから「病気が進んで痛みもひどくなってきた時期に緩和ケアチームのスタッフが来るようになって、痛み自体は多少楽になったし、話も聞いてもらえるのでよかった。でも痛みや気持ちのつらさについて主治医に話すと、主治医は『緩和ケアチームの先生たちによく話して下さいね』と言い、それまでよりも話を聞いてくれなくなった」と言われたことがある。たしかに痛みや心理面の専門家が加われば、治療の一部を彼らに任せることになりやすい。ワークショップの議論の中でも「緩和チームが治療の一部を担うよりも、主治医へのアドバイスが本来の役割ではないか」との指摘があった。
日本における心身医学黎明期の議論を思い出した。「心身両面から診療にあたるという全人的医療の理念は極めて重要である。しかしそれの専門家が直接診療に当たったら、現場の主治医は心理社会的な問題への対応を彼らに任せて、ますます身体しかみなくなるのではないか」という問題提起があり、「心身医学は教育的役割を担い、診療部門としては消失した時が医療の理想である」と唱えた者も少なくなかった。さらに「全人的医療の教育のために心身医学の専門家は必要である」、「身体科の医師に心理社会面のケアを求めても、知識、時間ともに無理がある。医療の理想からははずれるにしても、その部分を補う診療部門があってよい」、「専門性の高い心身医学研究はありうるのだから心身医学の専門性と一般性がもっと議論されねばならない」などの議論もあった。精神医学の一分野とされるコンサルテーションリエゾン精神医学も同様な面をもつ。このような議論が続きながら心身医学臨床の現状はどう評価されるのであろうか。心身両面からみるという考え方の普及に貢献したであろうが、臨床の中で担当する領域はなお曖昧なままであり、大学などでは講座として増えていない。
さらにコンサルテーションリエゾン精神医学では主治医の教育や主治医の補助だけでは医療経済面で報われないことが大きな理由となって、medical
psychiatryという考え方が誕生した。Medical psychiatric unitで精神科医が主治医となって身体医の援助を受けながら身体疾患までみるという方法である。医療費全体としては抑制できる可能性があるが、精神科医の病院収支への貢献度はあがる。これも緩和病棟の意義を考える時、参考になるようにも思う。
緩和ケアチームでは多くの場合、痛みやゆううつ感という本来主治医が対応してもよい症状の治療に対して異なる専門性をもつグループが参加する。大学病院などでは研修中の医師を教育するという面がみえやすい。一方、がん専門医がいて高度な医療を行う病院では、知識、時間ともに限界がある医師の診療の一部を補うことが多い。しかしこのような施設でも、がんの身体医学の専門性は高いが痛みや心理面への対応が不十分と考えられる医師に対する教育を主たる役割にしなくてよいのであろうか。保険で認められた緩和ケアチーム加算は診療に加わった時点で認められるが、経済性をもとに診療に加わるのが当然と考える方向に傾くのも困る。サイコオンコロジーががん臨床において何を目標とするかにも関係するであろう。
教育と診療、どちらが主な役割なのであろうか。現状では現場に即した役割を担わざるをえないが、十分な議論の下、目標とする医療像はもう少し明確に持ちたいと思う。
以上
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