| 早期乳がん患者に対する認知−実存的グループ療法が生命予後に及ぼす効果 |
国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部
中谷直樹
Kissane DW, Love A, Hatton A, Bloch S, Smith G, Clarke DM, Miach
P, Ikin J, Ranieri N, Snyder RD. Effect of Cognitive-Existential
Group Therapy on Survival in Early-Stage Breast Cancer. J Clin Oncol
2004; 22: 4255-60.
【目的】
認知−実存的集団療法(cognitive-existential group therapy: CEGT)は、がんに対する対処行動及びサポートを促進させる目的で開発された。本研究では、早期乳がん患者を対象にしたCEGTによる、積極的対処行動の獲得及びサポートの促進により生命予後が延長するという仮説を検証した。
【対象と方法】
<デザイン>
303名(62%)の補助化学療法による治療を行っている早期乳がん患者を無作為に2群に分けた。CEGT群(154名)は、20セッションの認知−実存的集団療法と3セッションのリラクセーションを行った。対照群(149名)は、3セッションのリラクセーションのみを行った。CEGT群は、1グループの人数を6-8名とし、セラピストは2名(うち1名は女性)とした。セラピストは、リエゾン精神科医、心理士、ソーシャル・ワーカー、がん専門看護師である。CEGTは、20週間(毎週1回、1回当たり90分)行われる。本療法は、マニュアル化しており、6つのゴール(支持的な環境作り、悲嘆の緩和、否定的思考の再構成、対処能力・問題解決能力を高める、希望を促す、将来に対する優先順位を付ける)を設定している。リラクセーション(CEGT群・対照群ともに行う)は、漸進的筋弛緩法を用いた。
<無作為化>
対象は、所属リンパ節転移、エストロゲン・プロゲステロン受容体、腫瘍の主径により層別化した後、無作為化した。
<盲検化>
両群に対する追跡調査(疾患の有無、再発・死亡の有無)を実施した者は、患者の割付け状況を知らされていない。
<統計解析>
全ての解析はintention-to-treat(割付重視の原則)を用いた。生存分析は、Kaplan-Meier分析及びCox比例ハザードモデルにより行い、エンドポイントは死亡とした。
【結果】
CEGTは、不安(p<0.05)、家族機能(p=0.07)、集団療法の満足度(p<0.001) における一定の効果が示された。
両群の平均生存期間(95%信頼区間)は、CEGT群で81.9ヶ月(64.8−99.0)、対照群で85.5ヶ月(67.5−103.6)であった。対照群を基準とした時、CEGT群のCox比例ハザードモデルにおける単変量解析の相対危険度(95%信頼区間)は、1.35(0.76−2.39;
p=0.31)であり、生存期間を延長させなかった。同様に、多変量補正相対危険度(組織学的異型度、腫瘍の主径、ステージ、リンパ節転移、エストロゲン・プロゲステロン受容体、化学療法、ホルモン療法、放射線療法、うつ病診断にて補正)の結果も大きく変化しなかった。
【結論】
早期乳がん患者を対象としたCEGTは、不安・家族機能に対する一定の効果を示したものの、生存期間を延長させなかった。早期乳がん患者を対象とした集団療法のエビデンスは少ないため、本研究の価値は大きいと考えられる。
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