| 早期乳がん患者における抑うつと不安:5年間の観察的コホート研究 |
国立がんセンター中央病院精神科
岡村優子
“Depression and anxiety in women with early breast cancer: five
year observational cohort study”
Burgess C, et al. BMJ 330(7493):702, 2005
【背景と目的】
乳がんの早期診断と全身的な補助療法によって無病期間を延ばしてきている。無病の乳がん患者の機能レベル・QOLは一般女性と同等、全身的な補助療法を受けている乳がん患者では劣るということが報告されているが、抑うつ・不安のレベルについては述べられていない。今回乳がん罹患後5年間と再発時の抑うつ・不安の有病率、リスクファクターの調査を行った。
【対象と方法】
対象は222名の早期乳がん女性。60歳以上、重複がん、妊娠中は除外した。治療は腫瘍摘出術・腋下隔清・放射線療法もしくは非定型乳房切除術・補助療法であった。診断から約8週後にリクルートし、診断から5ヶ月後と5年間18ヶ月ごとにインタビューを行った。再発した患者は診断から8週後に最終インタビューを行った。評価:・抑うつ・不安(大・小うつ病、全般性不安障害、パニック障害、広場恐怖)をSCID(DSM-IIIR)短縮版を用いて評価(5ヵ月後のインタビューでは診断1ヶ月前〜5ヵ月後までの抑うつ・不安を評価し、21、39、60ヵ月後にインタビューを行った。point
prevalenceはある時点の前月の抑うつ・不安の有病率であり、annual period prevalenceは1年間に1度でも抑うつ・不安のエピソードがあった割合を示している。)、・がんと関連しないストレスフルな体験についてBedford
College life events and difficulties schedule(5ヵ月後のインタビューでは診断1ヶ月前〜5ヵ月後までの状態を評価し、21、39、60ヵ月後にも行った)、・信頼できる関係のパートナーの存在、・心理的治療歴(GP、入院・外来での過去の治療があるかどうか)
【結果】
初回インタビューは91%(202/222)に施行された(拒否:15人、転居:2人、コンタクトできず:3人)。脱落:2度目のインタビュー9人、3度目7人、4度目1人。癌と関連しない死亡3人。77%(170/222)に診断から5年後もしくは再発までインタビュー可能であった。39人に再発が確認された。抑うつ・不安の有病率はPoint
prevalence:診断時33%、3ヵ月後24%、1年後15% (ボーダーライン症例も含む)、Annual prevalence:診断1年目48%、2年目25%、3年目23%、4年目22%、5年目15%。診断時の抑うつ・不安には心理的治療歴が関連していた。4ヵ月後〜2年後の抑うつ・不安のリスクファクターは心理的治療歴、信頼できるパートナーの欠如、がんと関連しない困難な経験であった。3年後〜5年後の抑うつ・不安のリスクファクターは信頼できるパートナーの欠如、若年、がんと関連しない困難な経験、診断後の抑うつ・不安であった。抑うつ・不安の期間が>90日続いていたのは81人(40%)、<90日は41人(20%)、80人(40%)は抑うつ・不安のエピソードなし。長期化(>90日)との関連因子は心理的治療歴、信頼できる関係のパートナーの欠如であった。初診断時より再発時で抑うつ・不安の有病率が高かった(再発3ヵ月後45%(95%CI
28-64%)、初診断3ヵ月後36%(95%CI 30-43%))。診断時の抑うつ・不安のエピソード、初診断から再発までの期間とも再発後の抑うつ・不安との関連はなかった。
【結語】
早期乳がん患者における診断後の抑うつ・不安の有病率は一般女性の約2倍である。病気が寛解している患者では一般女性と同等の有病率であるが、再発患者では上昇する。リスクファクターとして病気・治療の因子より患者自身の因子があげられた。効果的な心理的介入が特に診断後の年と再発時に必要とされる。
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