News Letter No.42 - Aug 2005 -
 
 Journal Club
終末期がん患者に対する輸液の効果:予備的研究

国立がんセンター東病院精神科
嶋本正弥


Effects of Parenteral Hydration in Terminally Ill Cancer Patients: A Preliminary Study
Bruera E, Sala R, Rico MA, Moyano J, Centeno C, Willey J, Palmer JL.
J Clin Oncol. 2005 Apr 1;23(10):2366-71
 
【はじめに】
 終末期がん患者の脱水に関して議論され、輸液を施行するかについては賛否が分かれる所である。レトロスペクティブ研究では鎮静、幻覚、ミオクローヌス、焦燥感と言った神経精神症状を軽減しうることを示唆しているが、輸液を施行することの利点、欠点に焦点をあてたRCTがないため、その意志決定は複雑なものとなっている。
 今回、進行がん患者の症状コントロールにおいて輸液が有益か比較検討した。
【対象と方法】
 MDアンダーソンをはじめ5ヵ国、5施設が参加した。適格基準は・進行がんで局所再発・転移にとどまり積極的治療の対象でないこと、・一日の経口摂取量が1000ml以下であること、・軽症から中等症の脱水状態であること、・16歳以上で研究参加に同意能力があること、・輸液施行可能であることとした。二重盲検で1000mlか100mlの生理食塩水輸液を無作為に割付け4時間、2日間施行した。
 鎮静、倦怠感、幻覚、ミオクローヌスの四つの脱水症状を患者が評価した。また、患者評価において1000mlの生理食塩水輸液を施行した群(治療群)は75%以上、100mlの生理食塩水輸液を施行した群(プラセボ群)は50%以上が重要な利益と感じたか、調査者評価において各輸液を施行した群で50%以上の患者へ利益と感じたか検討した。
【結果】
 108例を想定したが、認知障害みとめず、参加意志のある脱水患者を同定することが困難で、参加は51例となった。28例は治療群に、23例はプラセボ群に割り当てられ、実際に評価できたのは49例(96%)であった。
 脱水症状は治療群で73中53が改善(73%)、プラセボ群で67中33が改善(49%)した。患者が輸液を有効と感じたのは治療群で17/27(63%)、プラセボ群で9/22(41%)、調査者が輸液を有効と感じたのは治療群で20/27(74%)、プラセボ群で12/22(54%)であった。
 今回、治療群では75%以上の患者(21/27(78%))が重要な利益と感じていたが、プラセボ群においても50%以上の患者(13/22(59%))が重要な利益と感じていた。しかし、調査者評価では各輸液を施行した群で50%以上の患者へ利益であったかについて、治療群において統計的有意差が認められたが、プラセボ群では認められなかった。
【考察】
 進行がん患者の輸液とプラセボを二重盲検無作為試験した初めての研究と思われる。
 今回の結果から、輸液は脱水症状を改善し、治療群で患者へ利益と感じられていた。しかし、プラセボ群59%の患者が36時間以内に重要な利益と感じているという事実は、二重盲検試験が必要であることを強調している。調査者が頻回に接触することで症状が改善することもありえる。
 適切な検出力のある二重盲検試験を長期フォローアップし、評価項目を検討することが、問題を解決していくには必要である。