| 中等度から重度うつ病に対する認知療法と薬物療法の比較 |
国立精神・神経センター精神保健研究所
成人精神保健部
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
精神行動医科学分野
原 恵利子
Cognitive Therapy vs Medications in the Treatment of Moderate to
Severe Depression Robert J. DeRubeis, Steven D. Hollon, et al.
Arch Gen Psychiatry 2005; 62:409-416
【背景・目的】
中等度から重度うつ病患者における薬物療法の有効性についてはきちんとしたevidenceがあるが、認知療法の有効性についてのデータは少ない。中等度から重度うつ病患者において、薬物療法と認知療法の効果についてプラセボコントロールを用いて比較検討した。
【方法】
Pennsylvania大学とVanderbilt大学の外来において、DSM-・診断のための構造化面接を行いうつ病と診断され、さらに24項目
Hamilton Depression Rating Scale(HDRS)の初めの17項目の得点が20点以上の18歳から70歳までの患者240人を、薬物療法群(n=120)、プラセボ群(n=60)、認知療法群(n=60)の3群に分けた。薬物療法群とプラセボ群はparoxetine10-20mgもしくはプラセボから開始し、有効量まで漸増し、短い支持的精神療法のセッションを受けた。8週後プラセボを解き、薬物療法群で反応基準(HDRS12点以下)を満たさない患者はリチウムもしくはデシプラミンを追加投与し、反応群はparoxetineを継続した。認知療法群は、各大学3人ずつのセラピストによって、初めの4週は週2回、次の8週は週1-2回、最後の4週は週1回50分のセッションが行われ、セラピスト同士は週に90分、meetingを行いケースについてreviewした。Pennsylvania大学の3人とVanderbilt大学の1人は熟練した認知療法家(経験7−21年)であったが、Vanderbilt大学の残りの2人は2年以内の経験であった。
反応基準をHDRS12点以下、寛解基準を7点以下とし、8週後と16週後の各群の治療反応性の差をCochran Q testを用いて解析し、同一大学内比較と場所と治療の相互関係をlogistic
regression modelsを用いて解析した。
【結果】
8週後の反応率は、薬物療法群50%、プラセボ群25%、認知療法群43%でCochran Q testによる3群比較で有意差を認めた。2群比較では薬物療法群>プラセボ群、認知療法群>プラセボ群で有意差を認めたが、薬物療法群と認知療法群では有意差を認めなかった。8週後のHDSRスコアでは薬物療法群がプラセボに対して有意に優れ、認知療法はプラセボに対しnon
significant trendを認めた。16週後では反応率が薬物療法、認知療法とも58%、寛解率が薬物療法46%、認知療法40%であり、場所毎に分析すると、Vanderbilt大学でのみ薬物療法が認知療法に勝っていた。これはセラピストの熟練度が影響していると考えられた。
【結論】
認知療法は中等度から重度うつ病患者において薬物療法と同等の効果をもちえるが、効果の程度はセラピストの経験や熟練度に影響されるかもしれない。
【コメント】
がん患者の抑うつにおいても認知療法の有効性が期待できるが、我が国では認知療法家の絶対数が少なく、きちんとトレーニングを受けた熟練したセラピストは更に少ないことから、今後の知識の普及や教育・研修体制の改善が望まれる。
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