News Letter No.42 - Aug 2005 -
 
 Journal Club
死、緩和医療、ホスピスケアに対する高齢者の態度

東京大学大学院医学系研究科
ターミナルケア看護学分野
芝垣真紀子


Older adults’attitudes to death, palliative treatment and hospice care
Catt S, Blanchard M, Addington-Hall J, Zis M, Blizard R, King M.
Palliat Med 2005, 19: 402-10.
 
【背景と目的】
 英国で専門的な緩和ケアサービスを受けるがん患者は、受けない患者と比較して年齢が若いことが明らかになっている。その理由として、年齢により死に対する態度や緩和ケアサービスに関する知識が異なることが考えられているが、年齢による差異については十分調べられておらず、本研究では、年齢と、死に対する態度や緩和ケアサービスに関する知識や態度との関連を検討することを目的とした。
【対象と方法】
 対象は英国のGPリストに登録されている55歳以上の成人から以下のように抽出された。まず、5段階に分けたJarman score(地域の社会経済状況の指標)を用い、地域状況に偏りのないよう10人のGPを選出した。各GPは患者リストから55-74歳の患者(以下、前期高齢者)と75歳以上の患者(以下、後期高齢者)が同数になるようランダムに50名をサンプリングし、身体的精神的に重篤である者や死別後間もない者は対象から除外した。
 質問紙を用いたインタビューで、人口統計学的因子および社会階級、婚姻や同居の有無、信仰、死への恐れ(RDAS)、QOL(Euroqol)、抑うつ症状の有無(GDS)、ホスピスケアに関する知識と経験、死に対する態度(AEOLI)、死への準備(遺言やリビングウィルの有無)について情報を収集した。受診回数や診断名、服薬状況についてはカルテから情報を得た。
【結果】
 連絡が取れた対象者570名のうち256名が調査を応諾し(前期高齢者群129名、後期高齢者群127名)、Jarman scoreが高いこと(地域の社会経済状況がよくないことを示す)と、調査拒否とに関連が見られた。前期高齢者群は後期高齢者群と比べて死への恐れが有意に強かったが、QOLや抑うつ症状では大きな差異はみられなかった。
 80%以上の回答者がホスピスケアについてよく知っており、40−50%の回答者が、「ホスピスを訪れたことがある」「家族や親しい友人がケアを受けたことがある」と回答した。
 また、回答者は「前期高齢者は後期高齢者と比較して死と向き合うことが難しい」と考えているが、緩和ケアのセッティングの中で前期高齢者が後期高齢者よりも尊重され、優先されるべきだとは考えていなかった。
 ホスピスケアに関する知識や経験、および死に対する態度について、前期高齢者群と後期高齢者群での大きな差異はみられなかった。また、教育歴や社会階層、ホスピスケアに関する知識、死への恐れやQOLが、死に対する態度に与える影響はほとんどなかった。
【結論】
 今回の結果からは、高齢者がホスピスケアを十分に利用していないことは、年齢による死に対する態度やホスピスケアに関する知識、態度の差異からでは説明ができないことを示唆している。今後は高齢者の緩和ケアニーズを明らかにしていくこと、そして紹介する医療者側の態度や実践、緩和ケアサービス側の受け入れ基準に関する研究も必要である。