News Letter No.42 - Aug 2005 -
 
 Journal Club
乳がんの後のリンパ浮腫症状に関する年齢による相違

福島県立医科大学看護学部
真壁玲子


Armer, J., & Fu, M. R. (2005). Age differences in post-breast cancer lymphedema signs and symptoms, Cancer Nursing, 28(3), 200-207.
 
【研究の背景】リンパ浮腫は、乳がん体験者のquality of life、家族関係や機能、仕事上の役割の遂行、自尊心に影響を及ぼす。年齢が乳がんの後のリンパ浮腫のリスクの一要因と考えられている。しかし、年齢と関連したリンパ浮腫の発症や症状、または、治療効果に関する研究の報告がない。
【研究目的】乳がんの後のリンパ浮腫の発症と自覚症状について、60歳未満と60歳以上で比較し、その相違を探求する。
【研究方法】研究デザインは、二次的データ分析による記述的・探索的・横断的研究である。
 研究対象者は、便宜的サンプリングにより抽出された米国中西部のがんセンターにおいて乳がんの治療を受け経過観察中の女性(N = 100)である。
 データは、上肢周囲径測定と面接用質問紙 Lymphedema and Breast Cancer Questionnaire(LBCQ)により収集された。上肢周囲径測定の部位は、手(中手骨付近)、手首、前腕、肘関節、上腕の5カ所、両側で10カ所である。cmでキャリブレーションされたGulickテープを用いてそれぞれ3回測定した。健側と患側の差が2cm以上の場合、リンパ浮腫有りとした。LBCQは、リンパ浮腫の自覚症状のアセスメント質問紙である。リンパ浮腫に関連した19の自覚症状について、現在(今現在から過去30日以内)、または、過去(過去12ヶ月)の症状の有無をyes またはnoで回答し、Yesと回答した場合、その症状への対応を質問する。他は対象者の背景やリンパ浮腫の対応に関する項目である。
 データは、記述統計、Shapiro-Wilk test、Fisher exact test、χ二乗検定により分析された。
【結果と考察】対象者の特性は、ほとんどが白人(95%)であり、平均年齢は58.7歳(31〜88歳)、手術後平均28.1ヶ月(1〜 294ヶ月)を経過し、60歳未満の者が51名、60歳以上の者が49名であった。リンパ節に関する治療的背景は、センチネルリンパ節生検 (n=9)、リンパ節郭清(n=67)、センチネルリンパ節生検とリンパ節郭清の両方(n=12)、どちらでもない(n=9)であった。
 リンパ浮腫は、60歳未満の者51名中21名(41.2%)、60歳以上の者49名中15名(30.6%)に有り、60歳未満の者により多い結果であったが、統計的な有意差はなかった。この結果は、60歳未満の者が仕事を有し、育児や高齢な両親の介護を行っている可能性があるためと考察された。また、60歳未満の者の上肢周囲径が60歳以上の者よりも上回ったのは測定部位5カ所のうち上腕のみで、リンパ浮腫のアセスメントとして手や手首、肘関節のみの観察では十分でないことを示唆した。
 リンパ浮腫と関連した自覚症状については、60歳未満の者でリンパ浮腫有りの者が60歳以上の者よりも有意に多く訴え、現在と過去のしびれ感、過去の圧痛、現在と過去の痛み、現在の上肢の熱感であった。これらのしびれ感、圧痛、痛みは、60歳未満の者にも60歳以上の者にも最も起こりやすい自覚症状であった。
 リンパ浮腫の無い対象者においても、リンパ浮腫と関連した自覚症状を訴え、60歳未満の者が60歳以上の者よりも多く、それらは9つの自覚症状(肩の運動制限、現在の乳房浮腫、現在の堅さ、現在と過去の重い感じ、現在と過去のしびれ感、現在の圧痛、現在の痛み)であった。60歳未満の者により多い結果は、高年齢なほど慢性疾患を持ち、症状は自分の生活の一部として症状を予期、あるいは受け入れている可能性がある。また、60歳以上の者は、関節炎などのために鎮痛剤を使用して自覚症状が少ない可能性もある。
【結論】60歳以上の者よりも60歳未満の者に乳がん後のリンパ浮腫の発症がより多くみられ、また、リンパ浮腫と関連した自覚症状の訴えも多いという結果であった。リンパ浮腫の症状による苦痛は、quality of lifeに影響を及ぼす要因である。今後、乳がんの後のリンパ浮腫のリスク、発症、リンパ浮腫の受けとめに関する乳がん体験者の年齢による相違に焦点化した研究が必要である。