ワークショップ「ギアチェンジ:治療・延命目的から症状緩和中心の治療・ケアへと移行する時
〜多職種チーム医療の中で看護師とコメディカルスタッフの果たす役割」を終えて |
国立がんセンター中央病院
リエゾン精神看護師
梅澤志乃
ワークショップ「ギアチェンジ:治療・延命目的から症状緩和中心の治療・ケアへと移行する時〜多職種チーム医療の中で看護師とコメディカルスタッフの果たす役割」の発表の概要および会場で交わされた討議について、ご紹介させていただきます。
当日は4人の演者を迎え、静岡県立静岡がんセンターの心理療法士である栗原幸江先生と筆者で司会を担当しました。
看護師である千?美登子先生(北里大学東病院)は、一度は積極的治療をしないと意思決定した消化器がん患者が放射線化学療法を再開した後ホスピスへの転院を決定するまでの事例を提示し、患者・家族の葛藤に真摯に向きあい、思いを傾聴しながら意志決定の過程に寄り添うという看護師の役割について紹介されました。また、看護師自身が自分の気持ちを振り返ることの重要性について言及されました。
ソーシャルワーカーである田村里子先生(東札幌病院)は、ご自身の臨床経験から、症状緩和中心の治療・ケアへの移行期に困惑している患者・家族の現状について述べ、その理由として、医療者からの緩和ケアに関する情報提供プロセス不足、緩和病棟が死を待つ場所という患者・家族の認識、治療期における受動モデルから緩和ケアにおける協力モデルへの急展開があること、の3点を指摘されました。そして、ソーシャルワーカーの役割として、患者・家族が抱く、怒り・嘆き・不信感・絶望・悲嘆といったさまざまな感情の聞き手となり、希望探索の協働者となることを紹介されました。
作業療法士である田尻寿子先生(静岡県立静岡がんセンター)は、まずがんのリハビリテーションについて、関わる時期における目的や内容の違いを説明されました。そして緩和ケア移行期の作業療法士として、・身体機能の変化に伴いADL訓練などの患者主体のものから受動的なものに形を変えながらも、リハビリテーションを継続することで希望をつなげる役割、・緩和ケア病棟への転棟といった変化する環境の中で不変的な存在として不安を和らげる役割、・機能障害が進行しつつある状況でもADLやQOLを維持できるような方法を共に探す役割、・身体機能や社会的役割などの喪失が続く中で、主体性を発揮し達成感を味わうことのできるような創造の場を提供する役割、について紹介されました。
そして、3人の演者の発表をまとめる形でMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの看護師であるNessa
Coyle先生は、アメリカで緩和ケア移行期に標準ケアとして行われている家族ミーティングについて紹介されました。特に印象に残ったのは、患者・家族とケアに関わる多職種チームメンバーが集まり患者の経過を振り返ることで、これまで延命目的の治療・ケアが可能な限り行われてきたことと今後は緩和中心の治療・ケアが重要であることを皆で確認するという点、ミーティングを通じて多職種チームが継続的に患者・家族をサポートしていくことを表していくという点でした。そして、通常このミーティングは、ソーシャルワーカーもしくは看護師が中心となって進め、必要があれば何度も開催されるとのことでした。
その後、これらの発表を基にフロアの参加者と討議を行いました。多職種チームメンバーが連携・協力関係を築いていく上で重要になると思われる点ついては、各メンバーの役割を明確にすること、お互いの役割を認め信頼関係を築くこと、主治医と協働すること、チームメンバーに患者・家族が含まれていることを忘れないこと、などの意見があがりました。また、フロアの参加者である医師は、コミュニケーションスキル訓練がしっかりとされていない現在の医師教育の問題点を指摘した上で、緩和ケア移行に関する話し合いの際にチームメンバーからのサポートをとても必要としているとコメントされました。
今回、緩和ケア移行期における看護師、ソーシャルワーカー、作業療法士の役割についてお互いが知り、それぞれが抱えている葛藤を共有したり、チームでいかに連携をとっていくかについて討議できたことは、とても貴重な機会になったのではないかと思います。私自身、ギアチェンジとは一地点ではなくプロセスであるということや、寄り添い希望を支えることの大切さを改めて感じました。また、チームで関わることの意味についても考えさせられる、とても学びの多いワークショップとなりました。演者の先生方、参加者の皆様に感謝してこの文章を終えたいと思います。
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