News Letter No.42 - Aug 2005 -
 
 第18回日本サイコオンコロジー学会総会
緩和ケアチームの現状と展望

昭和大学病院緩和ケアセンター
樋口比登実


 ペインクリニシャンとして大学病院の緩和ケアチームで活動している立場から、今回のワークショップの司会者として感じたことを述べさせていただく。
 2001年10月縁あって(?)緩和ケアチームの一員となった。当初は手術室麻酔、ペインクリニック外来で神経ブロックも施行し、緩和ケアチームとしての活動も行っていた。2002年4月緩和ケア診療加算が算定できるようになり、専従医となった私は手術室から疎遠となり来る日も来る日もがん患者と向き合うことになった。もともと緩和ケアは特別な医療ではないと思い20数年医療に携わってきた私には、この活動に若干の違和感を覚えていた。その思いの根底には、WHOのラダーもモルヒネ徐放薬もフェンタニルパッチもない時代に、神経ブロックとモルヒネ水などで症状コントロールし穏やかな生を全うした患者を経験している自信(過信?)があるからかもしれない。現在もその思いは変わりなく、全ての臨床医は緩和ケアの知識を修得すべきであると考えている。
 緩和ケアチームに求められることは各病院によって大きく異なることは異論のないところであろう。大学病院の緩和ケアチームに求められることは間違いなく“教育”である。北里大学の宮岡先生も大学病院のチームに求められるものは教育であり、今の緩和ケアチームの活動は、以前のリエゾン精神医学の創成期と似ていると講演されていた。毎年毎年医師の雛が孵る大学病院では、WHOラダーの考え方、モルヒネの説明の仕方・使用法から、症状の捉え方まで先輩医師が身をもって示さなければならない。各科医師が多忙を極める中で、症状コントロールが困難な症例、患者家族と療養先などの問題が山積し絡んだ糸が解けないような症例の依頼がチームに出てくる。症例を紐解く中で若い先生方に処方を覚えていただき、患者との向き合い方も学んでいただきたいとベッドサイドに臨んでいる。
 しかし、熟練した医師が活躍する一般病院のチームはまったく異なった機能を求められている。聖霊三方原病院の森田先生の発表のようにWHOラダーやモルヒネの使い方ではなく、高度な症状管理を要求されておられる。その中でも、年を追う毎にその要望も変化してくるという報告には、さすがと思わざるを得なかった。熟しているチームの活動とはこういったものであろう。チームがきちんと活動すれば、院内のスタッフがさらに成長し、個々の問題も明確になり依頼の質も上がりチームの成長につながる。多忙な日々の臨床の中これだけのデータをまとめ多くの論文を発表なさっておられる森田先生には脱帽である。緩和ケアチームの一つの理想像と考えている。
 静岡がんセンターにおけるチームもわれわれとは全く異なっているようである。緩和ケア病棟を背負っておられるので療養先には困らず羨ましいなどと思っていたが、大きな誤りであることが明らかになった。がんセンターに集まる患者の特性を考慮しギアチェンジに関わっていく難しさ、症状コントロール以外の関わりの多さ、スタッフの教育などがん治療最前線の専門病院でのチームの活動の現状を高橋先生が報告された。最後まで積極的に治療を受ける強い希望を持たれた患者の終末期医療の難しさを改めて考えさせていただいた。
 チームのあり方、求められることは異なっていても、それぞれのチームが各施設での担うべき役割や望ましい診療スタイルを模索し、適切な評価指標で自らを発展させていくことが重要であろう。そのために笹原先生の研究を参考にSTASなど活用していただきたい。
今回のワークショップを今後の緩和ケアチームの活動に役立てて頂き、多くのチームスタッフが臨床・研究において活躍・発展されるよう望んでいる。