| シンポジウム1「Bad Newsをどう伝えるか?」のまとめ |
国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部
藤森麻衣子
がん医療に携わる医療者は、非常に多くの局面で患者、家族、医療者間のコミュニケーションの重要性を認識している。また、コミュニケーションは学習可能な技術であるとの報告が多数あり、医学教育に携わる医療者にとっても非常に興味のある話題であったと思われる。そのため、本シンポジウムは立見が出るほどの盛況振りであった。
本シンポジウムは、医療者が患者、家族に悪い知らせ伝える際のコミュニケーションに焦点を当て、より望ましいコミュニケーションを目指して討論が行われた。Bad
Newsを伝えられるときのコミュニケーションに対する患者の意向について調査を行った結果を述べた内富氏の共同演者として参加した感想を以下に述べさせていただく。他の演者は、がんと向き合う患者の立場から関原氏、がん専門看護師の立場から近藤氏、がん専門医に対するBad
Newsの伝え方を教育しているBaile氏であった。
がん医療における悪い知らせとは、がんの診断や再発、治療の不成功などであり、そのような情報を伝えられた際、患者は情報の包括的理解の困難、判断力の低下といった認知面、取り乱す、涙ぐむ、怒るといった感情面、緊張、不眠、食思不振といった身体的な反応を呈する。そのためどのように伝えるかが重要となる。関原氏は、アメリカの病院と、国立がんセンター中央病院において、それぞれきちんと情報提供を受けたことで、病気に対する正しい知識を得て、積極的に治療に取り組めた経験に基づき、患者に対する適切で正確な情報提供の重要性を指摘された。近藤氏はBad
Newsを伝えられる患者、家族に対する看護師の関わり方についての総論とご自身の臨床経験を話された。Baile氏は米国で実践されているコミュニケーション・スキル・トレーニング・プログラムを紹介してくださった。テキストはホームページで公開されているということで、コミュニケーション・スキル・トレーニングを取り入れたいが方法論がわからないという参加者には非常に朗報であったと思われる。
討論の主題は、2点あった。第1に、私たちの調査結果に関して、「医師は悪い知らせを段階的に伝える」ことを望むという回答が32%、臨まないという回答が46%であったという結果を受けたものであった。これまでのエキスパート・オピニオンでは、悪い知らせを伝えられる際のコミュニケーションとしては、段階的に伝えることが推奨されてきたが、段階的に伝えないほうが良いのかという質問に対して、内富氏は段階的に伝えられることに対する意向は患者ごとに大きく異なっているため、個々の患者の意向を確認することが重要であると回答した。第2に、家族が患者にBad
Newsを伝えることを反対したときの家族への対応についてであった。近藤氏は看護師の立場から、家族への配慮の重要性を述べられた。一方で、関原氏は患者の立場から、患者のケアを第一に考えた上での家族への配慮を指摘された。これらの話題から、コミュニケーションは個別性の高い問題であり、個々のケースごとに何が最良か吟味することの重要性を改めて感じた。
本シンポジウムを通して、がん医療を円滑に推進するために、患者、家族、医療者間のコミュニケーションが果たす大きな役割、特にコミュニケーションの多様性について再認識することができ、大変有意義であった。
|