News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 書評コーナー
全国「患者会」ガイド
学研、2004
監修:和田ちひろ(いいなステーション代表)

東京大学大学院医学系研究科
健康学習・教育学分野
高橋 都



 「いいなステーション」代表の和田ちひろ氏によってまとめ上げられた、最新版の全国患者会リストが学研から出版された。「いいなステーション」とは、「こんな医療(病院)あったらいいな」を合い言葉に、具体的な実現策に向けて各種調査や実践活動をしている団体である(URL: http://e7station.com/ )。
 厚さ3センチの本書の特徴は、何と言っても、その圧倒的な情報量である。全国の患者会や患者同士が交流するインターネットコミュニティが、実に1670件も掲載されている。患者会の場合は、連絡先、活動内容、会報や刊行物、その会に関わっている医師などの情報が整理され、ネットコミュニティの場合は、テーマとしている病名、サイトのURLと内容、そのサイトで利用可能なサービス(掲示板、メーリングリスト、チャット、専門家による相談など)が記載されている。目次に挙げられた疾患は、「がん」「赤ちゃん・子ども」「女性」「呼吸器」「心臓・血管」「消化器」「腎臓・尿路」「脳・神経・脊髄」「血液」「内分泌。代謝」「アレルギー・免疫」「感染症」「骨・間接・筋肉」「皮膚」「目・耳・口・喉」「こころ」「障害」と、わかりやすい表現で分類整理され、全身を網羅している。「がん」については、30の患者会と41のネットコミュニティが紹介されていた。さらに、従来は「疾患」として分類されにくかった様々な状況、たとえば、ドメスティックバイオレンス、死別、予期しなかった妊娠・出産なども「その他」にまとめられている。また、「サポート」の章には、疾患分類以外の各種相談窓口、たとえば医療事故やセカンドオピニオン、家族滞在施設、患者図書館などの情報が掲載されている。
 これだけの情報を一つ一つの団体とやりとりをしながら正確にまとめ上げるには、どれほどの労力と細やかさが必要だったことだろう。和田氏は今までにも全国の患者会ガイドを出版しているが、それらの地道な活動で培った人脈と信頼が、今回の最新版に結実しているように思う。しかし、本書の魅力はその詳細さだけではない。もう一つの特徴は、この本が単なる患者会情報のリストを超えた、実に奥深い「読み物」になっている点だ。巻頭には、同病者交流の意義を体験的に綴った読み応えのある特別寄稿が6本掲載され、加えて本文中にもさまざまな患者会参加者の「メッセージ」が散りばめられている。同じ問題を抱えるからこそ理解できる心情や、体験的知識を蓄積して共有することの効用についても知ることができ、極めて立体的な構成になっている。
 もちろん国内にはここに紹介されていない集いやサイトが数多くあるだろう。しかし、本書を手に取るだけでも、すでにわが国には「病気の数だけ自助グループがある」と言っても過言ではない状況にあることが実感できる。まずは、自分の専門に近い領域のページを開き、掲載されているインターネットコミュニティをのぞいたり、地域の患者会に参加したりしてみてはいかがだろう。そこにいるのは、普段私たちが医療施設で出会う「治療対象としての患者さん」ではなく、生活者としての個人だ。そこで交わされている情報は目を見張るほど質が高いし、医療従事者に対する本音を聞くこともできる。患者会やネットコミュニティは、医療を受ける立場にとっては貴重な社会資源であり、そこから情報を得て医療者と向き合う患者は今後増加の一途をたどるだろう。医療者側も、従来とは違う対応を求められる。患者会やネットコミュニティは、実は医療者自身にも貴重な社会資源ではないだろうか。
 病棟や外来の本棚など、すぐ手にとれるところに置いておきたい一冊。