News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 施設紹介
当院緩和ケアとサイコオンコロジーの歩み

福井県済生会病院ホスピス(精神科)
谷 一彦



福井県済生会病院 全景 当院は福井市に位置し、福井県における中核病院の一つで、日本医療機能評価機構の認定(Ver.4)も受け、地域がん診療拠点病院にも認定されている。病床数466床(うち結核病床10床)、常勤医師数100人で昨年度の1日平均入院患者数455.9名、平均在院日数15.5日、1日平均外来患者数1144.9名と大変忙しい病院でもある。
 精神科は入院病床を持たず、外来診療とリエゾンが主体である。当院のホスピスは98年の10月に開設されたが、開設準備委員会はその2年前に結成され、当時がん患者のリエゾン活動を積極的に行っていた関係で小生がその委員長となり、当初から精神科医を中心として準備が進められた。
 準備にあたり、まず取り組んだのは緩和ケアについての院内職員、院外医療関係者、そして地域市民への啓発である。当時はまだ当院でも県内でもがん告知は一般的でなかったが、患者の人格を尊重するなら、そして患者にきちんと向き合うためにはがんの告知が必要であることを理解してもらうため、緩和医療関係の講師を招いての公開講演会を何回も行い、実際のがん患者の方にも演者として参加していただき、マスコミにも積極的にとりあげてもらった。がん告知ガイドラインを作成し、全職員に配布し、新人職員のオリエンテーションにも組み込んでもらい、患者へのICについてのアンケート調査、さらにがん告知が難しい症例での援助(患者、家族との面接)も行った。緩和ケアの発展のためにはがん告知と緩和医療技術の向上が車の両輪であり、開設準備委員会のメンバー(精神科医、外科医、内科医、看護師)でチーム医療を実践、研修に努めた。同時に院内勉強会(ターミナルケア研究会)も立ち上げ、基本となる患者の苦痛の全人的理解の教育に力を入れた。
 ホスピス開設後はホスピス専従医となったが、身体治療面での不足を補うためだけでなく、ホスピスの孤立化を防ぐために元の主治医との共同主治医制とし、患者を必ず精神面と身体的な面とでみると共に、ホスピスでの経験を院内に還元するようにし、疼痛治療や緩和ケアの進め方などを記載したターミナルケアの手引きを作成し、院内に配布した。一般への啓発としてはホスピス市民教室を毎月開催し、ホスピスを実際に見学してもらうようにした。
 当院ホスピスは患者が自分の病気を理解して、患者の希望、同意を原則としているが、上記のような活動の結果、内科、外科などのがん告知率は80%以上となり、ホスピスの運営も当初から順調で、開設からの病床利用率は95%で、年間平均145人(昨年度は166人)の利用がある。しかし、入院待ち時間が1ヶ月を超えることもあり、施設ケアの限界も感じていたが、昨年外科の専従医が加わり、緩和ケア認定看護師も生まれ、緩和ケア外来を立ち上げ、一般病棟入院患者の緩和ケアと在宅ホスピス活動にも取り組めるようになり、ようやく緩和ケアの三本柱ができた。緩和ケア外来は「がんの悩み相談外来」と呼称し、医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどが、患者のみならず、家族の悩みにも対応し、毎月の新患が20名弱、再診が数十名となり、在宅ケアについては昨年は4名を在宅で看取った。
 以上、当院の緩和ケアとサイコオンコロジーはリエゾンの一環として始まり、啓発、実践と進んできた。緩和ケア外来、在宅ホスピスの充実などもさらに必要だが、今後は質の向上が課題であり、STAS(Support Team Assessment Schedule)、CES(Care Evaluation System)などによる質の評価、第三者評価、研究活動などに取り組まねばならないと考えている。