News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Current Opinion
米国における緩和ケア領域ソーシャルワークの臨床・教育・リサーチの質向上への動き
Project Death in America: Social Work Leadership Development Awards Annual Retreat参加報告

静岡がんセンター緩和医療科
栗原幸江



 7月12〜14日、Project Death in America(PDIA)の分科会の一つであるSocial Work Leadership Development Awards (SWLDA)の Annual Retreatが米国ニューヨーク州モントークにて開催された。Project Death in America(PDIA)とは、1994年にOpen
Society Institute(ソローズ財団ネットワーク)が打ち出したプロジェクトであり、「米国における終末期ケアの質向上」を目的に、医療、教育、メディアなど様々な分野に対して2003年の終結時までに4500万ドルの助成金が投入された。SWLDAへの助成は2000年にスタートし、全米各地から選ばれた臨床家、教育者、研究者からなる42名の「ソーシャルワーク・リーダー」たちに対して5年間で総額294万ドルの助成金が提供された。
 SWLDAのAnnual Retreatは毎年有名リゾートで開催される。「Retreat」とは「療養」という意味であるし、「ゆったりと日ごろの業務の疲れを癒す意味合いもあるのかな」という期待半分に参加したのだがその期待は大きく裏切られ、朝から晩まで目いっぱいスケジュールが組まれたあっという間の3日間だった。とはいえ、合間の食事やコーヒーブレークを共にする中で参加者同士が様々な話をし、情報を共有し、ネットワークの絆を深めるという「楽しみ」は「Retreat」の色合いなのかもしれないと感じた。
 SWLDAがもっとも力を入れているのは、「臨床家の質の向上を目指した」継続教育プログラムの開発展開であり、今回もその関連で多くのプロジェクトが紹介された。現場の臨床家を対象とした卒後教育プログラムや、修士課程にいる学生を対象とした他職種との合同教育(医学生や神学生との合同カリキュラム)、小児の緩和ケアに携わる研修プログラムやビデオ教材の開発など、次々と「ニーズ」を形にして実践に移していくプロセスを目の当たりにし、ソーシャルワーク・リーダーたちの精力的な活動発表を感嘆の思いで聞いた。その他にも、女子刑務所の中で受刑者がきちんとした医療を受けられるように、がんという疾患、緩和ケア、Advance Directiveといったテーマについてイラストや平易な言葉で分かりやすく説明したハンドブックの作成や、医療者のコミュニケーションを向上させるためのプログラム開発、知的障害をもつ患者の意思決定について考えるといった倫理的ジレンマに関するワークショップなど、「臨床実践における旬のトピック」も満載だった。
 多職種チーム医療の中でソーシャルワーカーの存在意義をアピールするには、現場の一人一人が日常臨床の力をつけることはもちろんだが、リサーチも欠かせない。臨床・教育・リサーチ・啓発における今後の課題についての検討が小グループに分かれて行われ、筆者は教育のグループとリサーチのグループに参加した。これまで研究や論文執筆とは縁遠かったが実践的な臨床プログラムを展開している臨床家と、臨床研究の場を求めている研究者や教育者とが一つのテーブルを囲み、緩和ケア領域におけるソーシャルワーク教育とリサーチの今後の課題について話し合うことの意義は大きいと感じた。PDIAの終結に伴いSWLDA retreatも今年で最後となるが、こうした話し合いはCouncil on Social Work in Palliative and End-of-Life Care(緩和および終末期ケアにおけるソーシャルワーク部会)という形で引き継がれていくことになるということだ。
 あいにくの大雨に見舞われたモントークretreatであったが、アメリカで仕事をしていたときに知り合った仲間たちとの再会もうれしかったし、今回のRetreat参加を通じて新たに広がったネットワークにも元気をもらいながら帰途に着いた。今回の経験が今後の「緩和ケア領域における心理社会的サポートに携わるコメディカル」の啓発に少しでも結びつくことができればと願う。