News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
家族グリーフセラピーにおけるセラピストの介入内容の検証

国立がんセンター中央病院精神科
心理療法士
浅井真理子



What Works for Therapists Conducting Family Meetings: Treatment Integrity In Family-Focused Grief Therapy During Palliative Care and Bereavement
Eunice K.H、et al J Pain Symptom Manage 2004;27:502-512
 
 
【背景と目的】
家族グリーフセラピー(Family-Focused Grief Therapy:FFGT)は、終末期がん患者の家族を対象に、死別後の家族の精神疾患を最小限に防ぐことを目的としたKissaneらによる予防的介入であり、家族機能(凝集性、感情表出、葛藤)の改善や家族間での悲嘆共有の促進を目標にして 「る。一方、家族療法においてセラピストの介入内容は介入規準到達度としてAdherence「遵守」とCompetence「適用能力」の2つの観点から検証されるが、過去(1994-1998年)の論文検索で「遵守」を確認したものは11%しか報告されていない。そこで今回は既に実施されたFFGTの無 hラ比較試験(RCT)でのセラピストの介入内容を検証する目的で、介入規準到達度を評価マニュアルおよび評価リスト(本報Appendix)に基づいて評価した。
 
【方法】
評価対象>FFGTの無作為比較試験(RCT)参加81家族中の介入群53家族の中から28家族を対象に実施された109セッション(全セッションの38%)を評価対象とした。RCT参加から患者死亡までは96日(平均)だった。FFGTによる家族介入は緩和から死別時期の6〜18ヶ月間、1回90分の Zッションを患者宅にて家族全員参加で実施した。セッションは1)評価(2回:週1回) 2)介入(4−6回:隔週から月1回) 3)終結(1−2回:2−3ヶ月に1回)の3段階から成り、頻度や回数は各々の家族で異なった。介入は15名の家族療法の訓練を受けたセラピスト(ソーシャルワーカー)が実施した。 評価方法>109セッションの録音された内容を2名の評価者が評価リストに基づいて検証した。評価リストには9領域(1:治療ゴールの計画、2:家族のスタイル、イデオロギー、歴史の理解、3:中心テーマを取り上げる、4:再保証、5:家 ーの問題解決援助、6:セッションの方向指示、7:焦点化、8:信頼関係の構築、9:終結)を設定した。これらの9領域をさらに細分化した下位項目(47項目)を「遵守」、「適用能力」のいずれかまたは両方に分類し、各項目の実施の有無を評価し、「遵守」、「適用能力」の実施率を算出した。2名の評価者間の評価信頼性はセッションの一部を対象にinter-rater reliabilityと kappa coefficientsで評価した。さらにFFGTの中心テーマである「凝集性」、「コミュニケーション」、「葛藤」、「悲嘆」が扱われた頻度をセッション段階毎に算出した。
 
【結果】
「遵守」に関しては全体平均で86%、「中心テーマを取り上げる」は95%以上と高い反面、「家族のスタイル、イデオロギーの理解」は58%、「セッションの方向指示」は58%と低かった。「適用能力」に関しては「信頼関係の構築」は94%、「家族の絆の確認」は90%以上と高かった。さらにFFGTの中心テーマは76%のセッションで扱われ、特に「悲嘆」に関しては80%以上のセッションで扱われた。扱われたテーマはセッションの段階に伴い「コミュニケーション」は減少し、「葛藤」は増加していた。2人の評価者間inter-rater reliabilityは88%(平均)と高uゥったが、Kappaは回答もれのため算出できない項目が多かった。
 
【考察】
セラピストの介入内容は「遵守」と「適用能力」の観点から検証可能であった。また「遵守」は全体的に高かった反面で、低い項目は今後の課題であった。今回の研究のLimitationとしては 1)rater bias として評価者が家族やセラピストに対して特定の印象を形成することや、評 ソ者の疲労感が評価に影響すること 2)sampling biasとして録音拒否の家族が除外されていること 3)halo effectとして特定部分の好評価が全体評価に影響すること 4)ハイリスク家族への対応の困難さ(治療抵抗)と介入内容の関連の評価が難しいこと 5)カテゴリーによ 髟]価法の使用 等が挙げられるが、全体的には訓練されたセラピストによる一定規準の介入の実施が検証された。
 
(コメント)
Kissaneらは従来の個人グリーフセラピーから体系的なモデルへの変換を提唱し、家族グリーフセラピーとしてFFGTのRCTを現在実施している。また経済効率を考慮して家族機能の悪いハイリスク家族のみを対象として限定している。これまでに介入対象家族の選択に関しては、Family Relationships Index(FRI)を用いたスクリーニングの妥当性を報告している(1)。終末期がん患者を抱え、且つ家族機能の悪い家族を対象としたFFGTではセラピスト介入が困難であり、さらに介入内容が介入効果に大きく影響することも予測される。そのため今回セラピストによる 刀E燉eの均一性がある程度検証されたことは、今後の介入効果報告の信頼性に寄与すると思われる。
 
(1)Kissane DW, et al Palliative Medicine 2003;17:527-537