News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
 

国立がんセンター研究所支所
精神腫瘍学研究部リサーチレジデント
吉川 栄省



Randomized, Placebo-Controlled Trial of Fluoxetine for Acute Treatment of Minor Depressive Disorder
Lewis L Judd,American Journal of Psychiatry 2004;161:1864-1871
 
大うつ病の診断基準を満たさず小うつ病よりも軽症であるとされる小うつ病(適応障害)の頻度は大うつ病の頻度を上回り、大うつ病と同様に自殺、disableなどを大きなインパクトがあるとされる。しかし、このような小うつ病に関する研究は大うつ病に比べ非常に少なく、推奨され 驩刀E法はない。今回、このような小うつ病とくに急性期におけるSSRI(fluoxetine)の治療効果を検討した論文が掲載されていたためここに紹介する。
【目的】小うつ病に対する、抗うつ薬(fluoxetine)の効果を大きなサンプルを用いて検討すること。
方法:対象は3施設(UCLA,ピッツバーグ大学、テキサス大学)において、地域住民に対して電話スクリーニングを行い、その結果同定された162例の小うつ病症例をfluoxetine投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。Fluoxetine投与群は10・を2週間投与し、その後20・の投与が行われた。初期評価には次の評価尺度が用いられた。小うつ病;National Institute Mental Health Diagnositic Module Interview Schedule (DIS); うつ病の重症度17 item 及び21 item のHamiliton Depression Rating Scale (HAMD);Beck Depression Inventory (BDI); 機能の全体的評定としてGAFを用いた。被験者は4週間のプラセボ投与後にもう一度上記の評価を行い以後、fluvoxetine及びプラセボをそれぞれ投与し1週間ごと、12週間まで上記の評価を行った。81例中59例(73%)の症例が研究を完遂した。
【結果】ベースラインにおいて小うつ病の重症度は軽症から中等症であった。Fluoxetine投与群はプラセボ群と比較して、うつ病の重症度は有意に改善していた(17itemHAMDにて2点、BDIにて約4点上回っていた)。GAFスコアはfluoxetine投与群はプラセボ群と比較して、4点多く改善していたが有意差を認めなかった。有害事象に関しては不眠がfluvoxetine群で多く観察された。4週間後小うつ病の重症度は軽減していたが、まだ小うつ病の診断基準を満たしていた症例が少なくなかった。
【考察】fluoxetineの小うつ病に関する治療効果の有効性が示唆された。しかし、改善した抑うつ症状の程度は小さく、心理社会的な機能の回復は十分ではなかった。大うつ病における、抗うつ薬の二重盲検試験でも同様のことが観察されており、心理社会的機能の十分な回復のためには、今回の観察期間(12週)以上の時間が必要なのかもしれない。本研究は次に述べる幾つかの問題点を内包する。今回用いられた抑うつの評価尺度は大うつ病における評価尺度であるため、小うつ病の重症度変化を評価するのには十分でなかったかもしれない。またfluoxetineの投与量が少ない。
【結論】小うつ病は大うつ病の前駆症状及び残遺症状としてまた、新たな障害として、観察されることは少なくない。Fluoxetineの12週間後の小うつ病症状に対する治療効果は、Placeboに比べて優れていることが明らかになった。
コメント:がん臨床の現場でも大うつ病よりも、大うつ病に満たない閾値下のうつ病に出会うことは多く、更に治療選択について、迷うことは多い。過去における閾値下のうつ病における、このようなトライアルは少なく、いずれもnegtiveであるか、positiveでも、抑うつ症状の改善 フ程度は小さい。また、本稿にもあるように適切な評価尺度がないのが現状である。今後、このような閾値下のうつ病について、様々なアプローチの研究が必要と感じられた。