News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
頭頸部がん患者における心理的要因と受診遅延行動

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
心療・緩和医療学分野
小林未果



Psychological Factors and patient delay in patients with head and neck cancer
 
D.M. Tromp, X.D.R. Brouha, J.R.J. De Leeuw, G.J. Hordijk and J.A.M. Winnubst
European Journal of Cancer 40: 1509-1516, 2004.
 
【背景と目的】 過去20年間、オランダでは、初診時に進行頭頸部がんと診断される患者の割合が増加しており、国際的に見ても同様な傾向が認められる。先行研究から、25%−30%の患者が医療機関へ受診するまでに3ヶ月以上を要することが明らかになっている。進行がん患者は広 ヘ囲にわたる治療が必要となり、QOLや治療の予後を悪くするであろう。このような受診遅延を防ぐためにも、本調査では、頭頸部がん患者の受診遅延行動と楽観的思考、健康耐久力、全般的な防御機能、コーピングスタイル、及び心理的ストレスなどの心理的要因との関連を調べた。
 
【方法】 診断を受けて数週間が過ぎ、かつ治療前の咽頭・喉頭・口腔の扁平上皮がん患者277名(男性191名-69%、65歳以上171名-62%)を対象として、心理的要因についての質問紙を配り、それぞれ記入してもらった。またインタビューの中で、喫煙やアルコール摂取の有無について 熬イ査した。
 
【結果】 受診遅延行動と以下の心理的要因との間に有意な相関が見られた。患者の26%が医療機関を受診するまでに3ヶ月以上要したことが分かり、3ヶ月以内に受診した患者に比べて楽観的でなく(P=0.0001)、健康耐久力(P=0.008)や積極的なコーピングスタイル(P=0.019)も低く、サポートを求めることも少ない(P=0.017)ことが分かった。また過度にアルコール摂取をしている人(一日にグラス5杯以上)は、アルコールを摂取しないまたは中程度に摂取する人(一日に0-2杯)や中−高程度のアルコール摂取者(一日に3-4杯)に比べて、受診遅延の X向がより多く見られた。さらに、過度のアルコール摂取者の25%において受診遅延行動を心理的要因で説明することができ、楽観的思考と宗教的なコーピングスタイルが最も重要な変数であった。一方、中−高程度のアルコール摂取者では21%、アルコール非摂取者から中程度の摂取 メでは6%において受診遅延行動を心理的要因で説明することができた。
 
【結論】 頭頸部がん患者における受診遅延行動は、特に過度のアルコール摂取者において深刻な問題であることが示唆された。また患者の心理特性が健康管理行動や受診遅延に影響していることが明らかにされた。ハイリスクグループである過度のアルコール摂取者に介入することは難しいが、彼らに対する健康教育はただ症状に注目するだけではなく、予測される結果や順応できるコーピング方法についての情報も提供するべきであることが分かった。