| 乳癌患者の呈するhot flashes(ほてり)に対するSSRI治療 |
島根大学精神科
稲垣卓司
文献
A pilot trial of paroxetine for the treatment of hot flashes and
associated symptoms in women with breast cancer
Weitzner MA et al. : Journal of Pain and Symptom Management 23(4)337-345,2002
Hot flashes(ほてり) は、異常な発汗やのぼせ、外陰部乾燥、頻尿、頭痛、肩こり、不眠、気分変動などとともに更年期(閉経後)のエストロゲン低下による主な症状であるが、乳癌の化学療法後にも生じる重要な症状である。乳癌治療後の約6割に生じるという報告もあり、対策が必要となる。エストロゲン補充が一番であるが、乳癌の再発の危険があり、日本ではビタミンEや漢方薬などが用いられている。近年、このhot
flashes(ほてり)にSSRIが有効という研究が報告されており、そのひとつを紹介する。
この報告では対象が6ヵ月以内に乳癌の化学療法を行なった者と施行中の者であり、ほてりの程度が中等度から高度(HFQ: Hot Flashes
Questionnaire(5段階0から4点で、4点が重度)
を使用)で、閉経している13人(平均年令
52才)である。評価はほてりの改善と、全身倦怠(MFSI: Multidimensional
Fatigue Symptom Inventory)、不眠
(PSQI: Pittsburgh Sleep Quality Index)、抑うつ気分(CES-D: Center for Epidemiological
Study)の改善を検討している。パロキセチン20mg/日を投与し、1ヵ月後に評価した。結果はほてり指数が平均3.62が2.08に有意に減少した。同時に不眠と抑うつ気分と全身倦怠感も有
モに改善した。副作用を呈した者はいなかった。乳癌の化学療法後の閉経によるほてりの症状にSSRIが有用と結論している。考察では閉経期(乳癌の化学療法後の患者)ではエストロゲンの低下をきたしており、エストロゲンがセロトニンの機能を高めるはたらきが特に前頭葉(前頭前
bノおいて)あるため、エストロゲンの低下がセロトニン機能の低下をきたし、うつや不眠、全身倦怠感をきたすとし、SSRI作用機序について述べている。
以上のように乳癌の化学療法におけるほてりに対してSSRIの有用性が報告されてきている。最近では男性の前立腺癌治療後のほてりの治療にもSSRIやSNRIが有効との報告*もある。また、ほてりに対するSSRIの作用機序についてはセロトニンの発熱中枢の調節作用も考えられる*がよく分かっておらず**、今後のさらなる研究が期待される。
*Management of hot flashes in breast cancer survivors and men with
prostate cancer
Stearns V: Current Oncology Reports 6(4) 285-290, 2004
**Hot flashes refractory to HRT and SSRI therapy but responsive
to Gabapentin therapy
Guttus T: Journal of Pain and Symptom Management 27(3)274-276,2004
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