News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
遺族の視点からの終末期医療の構造とプロセスの質の評価
:ホスピス・緩和ケア病棟のケアに対する評価尺度の開発

大阪大学大学院人間科学研究科
平井 啓



Measuring the Quality of Structure and Process in End-of-Life Care from the Bereaved Family Perspective.
Morita, T., Hirai, K., Sakaguchi, Y., Maeyama, E., Tsuneto, S., Shima, Y.
Journal of Pain and Symptom Management,27(6): 492-501, 2004.
 
患者立脚型の医療アウトカム評価の取り組みとして、QOL評価に関する研究が盛んに行われている。ホスピス・緩和ケア病棟においても、ケアのアウトカム評価が求められる時代となってきた。しかしながら、ホスピス・緩和ケア病棟におけるアウトカム評価は、患者のほとんどが死亡 ゙院するという状況において、非常に困難を極める課題となっていた。そこで、遺族を対象にホスピス・緩和ケア病棟ケアに対する評価のための尺度開発研究が行われたので紹介する。
【目的】
終末期医療の質の改善の第1のステップは、ケアの構造とプロセスを測定することである。本研究の目的は、遺族の評価による、ホスピス・緩和ケア病棟のケアの構造とプロセスのそれぞれの側面について改善の必要性を問う尺度を作成し、その妥当性を計量心理学的に検討した。
【方法】日本全国のホスピス・緩和ケア病棟70施設で死亡した患者の遺族1225名(開発段階調査: 800; 検証段階調査 : 425; 再調査: 281)を対象とした。対象者は、新たに作成したケアに対する評価尺度( Care Evaluation Scale: CES)と、アウトカム指標としての知覚された実際 フ状態と満足度、相関の予想される指標としてのケアに対する期待度、抑うつ(CES-D)社会的望ましさ尺度に回答した。 CESは、先行研究で用いた項目や体系的文献検索等を用いて項目の収集を行い、準備項目67項目を作成した。
【結果】尺度開発のための調査では、485名の有効な回答が得られ、 CESは、クロンバックのα係数が0.98、級内相関係数が0.57となり、高い内的一貫性が得られた。検証的因子分析結果、身体的ケア(医師による・看護師による)、精神的ケア、説明・意志決定(患者への・家族への j、設備・環境、介護負担軽減、費用、利用しやすさ、連携・継続の3次構造で10因子28項目からなる尺度が作成され、高い構造的妥当性が確認された。検証段階調査では、310名から有効な回答が得られ、さらにそのうち202名が再検査に回答した。検証的因子分析の結果、ケアに対す 髟]価尺度の因子構造が高い適合性を持って再現することが確認された。 CESの下位尺度と対応する知覚された実際の状態と満足度の項目では、中程度の相関がえられた( r = 0.36-0.52; 0.59-0.60)。多変量解析の結果、CESのスコアと、ケアに対する期待度、抑うつの変化、社会的望ましさの間には有意な関連は認められなかった。再検査における、検査−再検査間の相関係数は、 0.69(尺度全体の合計得点)であった。
【結論】ホスピス・緩和ケア病棟ケアに対する評価尺度(CES)は、遺族の評価によりホスピス・緩和ケアの構造とプロセスのそれぞれの側面について改善の必要性について測定できる信頼性・妥当性のある尺度である。この尺度の利点としては、 1)ケアの構造とプロセスを特定的に測定できる、2)必要とされる改善点を直接特定できる、3)ケアに対する期待度、抑うつ、社会的望ましさに影響をうけない、4)計量心理学的に十分な裏付けがあることがあげられる。
なお、 CESの原版のダウンロードや解説は、下記のWebページより可能となっている。
CESのWeb page: http://rinro5.hus.osaka-u.ac.jp/CES/index.html