News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
緩和ケアにおける不眠に対するベンゾジアゼピン系薬剤による治療

愛知県厚生農業協同組合連合会
海南病院精神神経科
木下善弘



Benzodiazepines and Related Drugs For Insomnia in Palliative Care
Hirst A, Sloan R
Cochrane Database Syst Rev. 2002(4):CD003346.
 
【背景】 不眠症は、睡眠不足を主訴とし、日常生活機能の低下および気分の障害を引き起こす。“正常”睡眠の定義が確立されていないため、正確な有病率は不明であるが、一般成人の58%が、週に2、3日以上不眠症状を経験しているという報告がある(Omnibus Sleep in America Poll, NSF)。不眠に対してはベンゾジアゼピンが最も多く使用されている。これらの薬剤は短期的に用いる場合には有益であるが、耐性、使用量増加、精神的、身体的依存といった問題出現の可能性があるため、4週間以上の連続使用は回避したほうがよい。緩和ケアにおける不眠に ホするベンゾジアゼピンの使用に関してのコンセンサスは存在しない。
【目的】 ベンゾジアゼピン、ベンゾジアゼピン受容体アゴニストを緩和ケアにおける不眠に対して使用した場合の効果および安全性を評価する。
【方法】緩和ケアを受けており、なおかつ不眠症の診断が下されているか、不眠の訴えがある成人患者を対象とした無作為割付比較試験(RCT)を複数の電子データベースおよびハンドサーチで検索した。ベンゾジアゼピン、ゾルピデム、ゾピクロン、あるいはザレピロンとプラセボあ 驍「はその他のコントロールとの比較試験を行った研究を対象とした。2人のレビューアーが独立にアブストラクト(入手可能なものに関しては全文)を読み、データ抽出および評価を行った。
【結果】採用基準を満たすRCTは見出せなかった。検討を行った37報の論文全てが除外された。
【考察】 徹底的な検索にもかかわらず、緩和ケアにおける不眠に対するベンゾジアゼピン使用の有効性、安全性に関するエビデンスを見出すことはできなかった。この結果は“効果についてのエビデンスがない”と解釈されるべきであって、“効果がないというエビデンス”と解釈さ 黷驍ラきではない。
【論文紹介者のコメント】緩和医療における不眠の治療にベンゾジアゼピンが有効というエビデンスがあるものと根拠なく考えていた紹介者のような読者にとって、示唆に富んだ内容の論文だと思われる。不眠に対してベンゾジアゼピンとその他の薬剤(抗精神病剤、抗うつ剤の一部等)のどちらを優先して使用すべきか考慮する際にも、参考になる論文である。