News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
 Journal Club
せん妄治療に対するリスペリドンとハロペリドールの二重盲検試験

厚生連昭和病院心療内科
本郷 仁



A double-blind trial of risperidone and haloperidol for the treatment of delirium
Chang-Su Han;Yong-Ku Kim
Psychosomatics 2004;45:297-301
 
【背景】せん妄は比較的短期間の間、意識と注意、認知、知覚が障害されることを特徴とする精神状態の変調と定義され、1日のうちで変動する傾向がある。せん妄を示す期間を短縮するために、迅速な精神医学的治療が一般的に推奨される。抗精神病薬はせん妄治療の一つの選択肢と考えられ、ハロペリドール(HPD)は、その有効性と抗コリン作用の少なさのために最もよく使用される。しかしながら、HPDには錐体外路症状のような重要な副作用があり、それらは最もせん妄を生じやすい高齢者や身体的に重症な患者により生じやすい。非定型抗精神病薬であるリスペリドン(RIS)は、セロトニン受容体とドパミン受容体の両方に比較的高い親和性があり、セロトニン受容体拮抗作用が、錐体外路症状に関連するドパミン受容体拮抗作用を減少することができる。したがって、RISは、定型抗精神病薬よりも副作用という点で利点があり、せん妄治療の第一選択薬となり得る。
【目的】せん妄治療に対して、RISの有効性をHPDと比較することを目的とした。
【方法】一般病棟、集中治療室、がん治療病棟に入院中の患者で、精神状態に変調を示し精神科に紹介されたすべての患者が評価された。せん妄のスクリーニングと検出はConfusion Assessment MethodとDelirium Rating Scale(DRS)で行われた。せん妄の診断は、DSM-・-Rの診断基 に従いStructured Clinical Interview for DSM-・-R(SCID)を用いて行われた。SCIDにより、何らかのタイプの痴呆やその他の精神疾患の診断が確定された患者や、精神科医の診察の前に抗精神病薬やベンゾジアゼピン類をすでに注射された患者や、気管切開のために言語的疎通が s可能な患者は除外された。二重盲検比較試験が用いられ、28名の対象患者がHPDもしくはRISの可変用量の投薬方が受けられるよう14名ずつ無作為に割り付けられた。それぞれの薬剤の初期投与量は、1日2回投与で0.75mg(HPD)、0.5mg(RIS)で、7日間にせん妄の状態により投与量は増加された。終了時点(7日目)の各群の平均投与量は、HPD:1.71mg(SD=0.84,range=1.0-3.0)、RIS: 1.02mg(SD=0.41,range=0.5-2.0)であった。研究期間中に各群2名ずつが脱落した。HPD群では、1名は2日目に身体状態が悪化したためで、もう1名は3日目に過鎮静を生じたためであった。RIS群では、1名は2日目に夫がこの研究への参加を反対したためで、もう1名は4日目に気管切開を受けたためであった。各群12名ずつの24名の患者が今回の研究を完了した。2つの群で、年齢、性別、身体状態などの点で有意な差は認めなかった。Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)を使用して、7日間毎日同じ時間にせん妄の重症度が評価された。t検定、フィッシャー正確検定、U検定、z検定、経時的繰り返しデータの二元配置分散分析が適宜用いられた。統計学的分析は、Statistical Package for Social Science(SPSS)を用いて行われた。
【結果】スクリーニングでのすべての患者のDRSの治療開始時の平均値は22.76(SD=4.30)であった。HPD群(平均=21.83 SD=4.43)とRIS群(平均=23.50 SD=4.19)(t=-0.95,df=22,p=0.35)の間で、DRSの平均値に有意差はなかった。各群のMDAS値はこの研究の期間で有意に減少しsス(F=53.95,df=6,132,p<0.05)。しかし、2群間でMDASの平均値に有意差はなかった(F=0.46,df=1,22,p=0.51)。さらに、2群間で薬剤への反応性に有意差はなかった(HPD群の反応性:75%、N=9;RIS群の反応性:42%、N=5)(p=0.11)。反応(MDASの合計点が13未満)までの平均期間はHPD群で4.22日(SD=2.48)、RIS群で4.17日(SD=2.14)であった。研究期間の3日目に反応を示した患者数は、HPD群では7名(58.5%)、RIS群では4名(33.3%)であったが、2群間に有意差はなかった(t=0.06、df=22、p=0.95)。研究を終えた24名の患者の中に、臨藷ー的に重大な副作用は示したものはいなかった。HPD群の1名の患者が軽度のアカシジア症状を示したが、研究期間中この副作用に耐えることができた。
【考察】今回の研究では、せん妄治療に対するHPDとRISの有効性や反応率に有意な差は認めなかった。しかし、今回の研究の問題点として、せん妄に対するRISの使用に関して経験とデータが少ないため投与量が確立されていないということ、対象患者数が少ないため今回の研究結果を・齡ハ化することに限界があるということ、薬剤による副作用の評価に公式な尺度を用いなかったため客観的評価に欠けたということがある。せん妄の急性期治療に対してRISはHPDより優れているとは限らないということができるかもしれないが、より大規模な研究により有意な差を認めs驍ゥもしれず、これらの結果を確証するために、今後より多くの症例での更なる研究が必要である。私個人としては、せん妄治療に対して、RISなどの非定型抗精神病薬を第一選択薬として用いることが多かった。今回のRCTでは有意差はなかったものの、HPDのほうが反応率が高い傾向があった。原著者らが指摘する問題はあるものの、RISよりもHPDを第1選択とすべきか迷われるところであり、さらなる研究がのぞまれる。