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国立がんセンター研究所支所
精神腫瘍学研究部
秋月伸哉
8月24日から26日にデンマークのコペンハーゲンで開催された第7回国際サイコオンコロジー会議とそれに先行して行われたサイコソーシャルアカデミーワークショップに参加させていただきました。その中でも筆者が参加した内容を中心にご報告させていただきます。
コペンハーゲンはこぢんまりしているものの、中世からの街並みが残されたとてもきれいな街で、治安も比較的よく、日没が遅いこともあり安心して歩き回れる都市でした。サイコソーシャルアカデミーワークショップはデンマークがん学会の施設内で行われ、私は「心理社会的研究のデザイン、実施、解析をどのように行うか」というセッションに参加いたしました。参加者は欧州からの参加者を中心に15名程度の小さなグループで、学会の主催者であるクリストファー・ヨハンセンをはじめとしたがん領域での研究者により、研究デザインなどの基礎的なことからの講義主体のワークショップでした。2日目には参加者各自が現在考えている研究の疑問点や問題点についてのディスカッションがおこなわれ、筆者自身が考えている研究計画について相談でき、個人的には大変意義深いものでした。
国際サイコオンコロジー会議は市外中心から少しはなれたところに位置する美術建築学校を利用しておこなわれました。約550人の参加者があり、16のプレナリーセッション、40のシンポジウム、多数のポスターを合わせて500題近い演題が発表されました。今回の学会ではHollandらNational
Comprehensive Cancer Network(NCCN)のグループを中心に提唱されている”distress”に関する報告が大変多く、distress関連の複数のシンポジウムが組まれていました。筆者はそのうちのPsychosocial
distress − the 6th Vital Sign, From identification to interventionというシンポジウムで発表させていただくことができました。このシンポジウムはdistressを発見するだけではなく介入にまで踏み込んだ研究についての発表で、各国での取り組みが報告されました。最初はヨルダンのDr.
Khatibが、NCCNの推奨する簡便なスクリーニング法であるDistress ThermometerとProblem Listを中近東の情勢に対応させた改訂版の作成と、ルーティンで実施することによりヨルダンの患者のdistressとして不安、恐怖、痛み、悲嘆、倦怠感が多いことを報告しました。カナダからDr.
Carlsonが3000人近いがん患者を対象とした調査で、4割弱の患者がdistressを有しているにもかかわらず、その半数は専門家による心理社会的サポート受けておらず、受ける予定もないことが報告されました。筆者は日本での取り組みとして、簡便なスクリーニング法としての“つらさと支障の寒暖計”の開発、それを用いた看護師によるスクリーニングが実施可能であり、スクリーニング後に精神科医の受診を進めることにより、専門家の治療を受ける適応障害とうつ病患者の割合が増加する可能性を予備的検討から報告しました。イタリアからはDr.
Grassiが、精神症状の評価面接ががん患者の精神症状の評価に有用である可能性を、米国からはDr. Zaboraがこれまでのdistressスクリーニング法からNCCNによるスクリーニングを用いたdistress介入プログラム開発の歴史を報告しました。最後にはDr.
Hollandらを交えて、精神保健のリソースが少ない途上国でdistress への取り組みをどのように行っていくか、6番目のバイタルサインとしてdistress評価を推し進めようとするカナダの取り組み、概念が明らかとはいえないdistressについて評価することの意義などが話し合われました。セッション全体としては、スクリーニングを用いた介入の経験が報告されているものの、効果を実証しようと試みている報告はほとんどなく、distressの概念やアプローチも研究者ごとに少しずつ異なっている印象を受けました。適応障害やうつ病をターゲットとしている私たちの研究の国際的な位置づけが明らかになったという意味で、非常に有意義なシンポジウムであったと思います。
次回の第8回国際サイコオンコロジー学会は2006年10月に、イタリアのヴェニスで開催されます。再来年には、またヴェニスで皆様とお会いできることを期待しております。
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