News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
  第7回国際サイコオンコロジー学会
 

国立がんセンター研究所支所
精神腫瘍学研究部
中谷 直樹



 2004年8月25-28日に、デンマークのコペンハーゲンにて開催された第7回国際サイコオンコロジー学会に参加させて頂きました。また学会に先立って、8月23-24日に開催されたワークショップにも参加させて頂きました。本学会会長は、Danish Cancer SocietyのChristoffer Johansen先生でした。Johansen先生の研究は、サイコオンコロジー研究を優れた疫学的手法を用い研究されております。私は、心理社会的要因とがん発症及び予後の関連について疫学的手法を用いて研究を行っており、Johansen先生の講演及び議論をとても楽しみにしておりました。
 まず、8月23-24日に開催されたワークショップ (タイトル: How to design, conduct and analyse psychosocial studies) では、疫学的研究手法に関する講義を聞きました。その講義は、Dr. Johansenをはじめ3人の先生方が講義を行い、その都度議論を行うという形式で行われました。症例対照研究、コホート研究、介入研究についての詳細な説明行い、議論も活発でして、有意義な講義でした。
 2004年8月25-28日に開催された学会では、特に、「Etiology: 病因論」のセッションを傍聴しました。本セッションでは、Danish Cancer SocietyのHansen PE氏が「パーソナリティとがん発症リスク」に関する研究の紹介がありました。以下、詳細を示します。1973年、スウェーデン双生児登録者29,595名に対し生活習慣に関する質問票及びパーソナリティ指標 (The Eysenck Personality Inventory) を配布した。1999年までがん発症の有無に関する追跡調査を行い、1,898例の全がん罹患例を確認した。その結果、Neuroticism (神経症傾向) 及び Extraversion (内向性-外向性傾向) ががん発症に及ぼす影響は示されなかった。次に、Danish Cancer SocietyのShapiro IR氏が、「精神的脆弱性 (Psychic vulnerability) とがん発症リスク」に関する研究の紹介がありました。その詳細は、1982年、デンマークの一般地域住民5,136例に生活習慣に関する質問票及び精神的脆弱性を配布した。1992年までがん発症の有無に関する追跡調査を行い、403例の全がん羅患例を確認した。その結果、精神的脆弱性ががん発症に及ぼす影響は示されなかった。スウェーデン及びデンマークにおける研究は、研究デザインのみならず調査基盤 (がん登録制度) が優れていることに驚くと同時に、とても勉強になりました。私は、8月26日にポスターセッションで「パーソナリティとがん発症リスク」に関する研究を行い、日本の一般地域住民を対象とした前向きコホート研究により、パーソナリティ特性ががん発症リスクに及ぼす影響は認められないこと発表しました。本研究に関しては、多くの先生方に興味を持って頂き、有意義な議論ができました。上記に示した2人の先生の研究及び我々の研究をまとめると、パーソナリティ特性は、がん発症のリスクには大きなインパクトは示さないことが一致して関連ないことを再認識できました。
 学会終了後、Danish Cancer SocietyのJohansen先生の研究室にお伺い致し、我々と共同研究をして下さるとのお話しを頂きました。今後、がん患者のパーソナリティと予後について、日本とデンマークのデータを用いて、その関連を検討する予定です。
最後に、本学会に参加し、とても良い経験ができました。今回の経験を生かし研究を行って行きたいと思います。