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国立がんセンター東病院精神科
清水 研
第7回国際サイコオンコロジー会議(IPOS)がデンマークの首都コペンハーゲンで8月26日から28日まで開催された。今年の日本は記録的な猛暑に見舞われ、8月下旬になってもその勢いは衰えていなかったが、成田からスカンジナビア航空の直行便を利用して11時間余りでコペンハーゲンに降り立つと、心地よい涼しい風に迎えられた。石造りの重厚感がある建造物が立ち並ぶ中、町全体は整然とした印象を受ける。物価が高いのには閉口したが、デンマークは政治的には福祉国家として知られ、教育、医療はすべて税金で運営されているとのこと。国民は10桁の独自の登録番号をもち、様々なregistry
が充実している事など、理知的な国民性を様々な面で窺うことができた。
会議の運営も派手ではないが、整然かつ着実に行われていた印象を持った。北米、ヨーロッパからの参加者がやはり多数ではあるが、アジア、オーストラリア、南米、アフリカからの発表も多くあり、発表者の職種も、精神科医、心理士、ソーシャルワーカー、看護師等々、多岐にわたっていた。私自身初めてのIPOS
参加であったので、全世界のサイコオンコロジー関係者が集う中、普段は本などでしか目にすることのない著名な研究者の口演を聞くことが出来るというのはなかなか刺激的な経験であった。
自分自身のテーマと重なることもあり、私自身は心理的苦痛のスクリーニングに関するセッションに参加することが多かった。National
Comprehensive Cancer Network のガイドラインに提言されたこともあり、がん患者の心理的苦痛はバイタルサインのように常に評価することが重要との認識が広がりつつある。心理的苦痛のスクリーニングはサイコオンコロジーにおける現在のトピックのひとつであり、世界中の施設から活発な報告が行われていた。英語圏では心理的苦痛に関して
“distress” という表現が用いられているが、英語圏以外の国では文化差もあり適切な表現を探すのに苦労するという話があった。日本語訳するときには「つらさ」という表現が苦心の上に用いられたりしていることと共通しており、興味深いものであった。
多くの発表があったが、スクリーニング研究の全体的な進行度としてはまだ始まったばかりという印象で、私自身のポスター発表も含め、内容は各施設の臨床実践の報告が大部分であった。心理的苦痛のスクリーニングの意義を実証するためには、スクリーニングを行うことによって患者の心理的苦痛が軽減されることを示す必要があると思われるが、そこまでに至るには様々な課題が多いことを実感させられた。介入研究を行うなどの、今後の地道な積み重ねが必要であろう。心理的苦痛のスクリーニングに関してはまだ今後の見通しが定まっていない状況であり、2年後の第8回の会議ではどのような報告があるのかが楽しみである。
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