News Letter No.39 - Nov 2004 -
 
  第7回国際サイコオンコロジー学会
 

北里大学医学部精神科
轟 慶子



2004年8月25日〜28日の四日間にわたり、デンマークはコペンハーゲンにて、第7回 世界サイコオンコロジー会議(The 7th World Congress of Psycho-Oncology)が開催された。運河沿いに建つThe Royal Academy of Fine Arts and School of Architectureを会場とし、ポスター会場では巨大な画板(平面でなく傾斜面!)にとんかちでポスターを貼付ける作業が早朝より黙々と続けられ、まるで木工工房のような物音に包まれていた。
 精神薬理の分野では、統合失調症に対する非定型抗精神病薬の登場によって、従来型抗精神病薬との比較や検討が積極的になされている。そして、いまだ日本では保険適応外であるが、非定型抗精神病薬のせん妄に対する有効性も注目されてきた。今回の我々の研究班では、非定型抗精神病薬の一つであるrisperidone oral solution(リスパダール内用液)のせん妄に対する有用性を検討し、ポスター発表をさせて頂いた。しかしながら、せん妄に限らずがん医療における精神症状に対する非定型抗精神病薬の検討は、ポスターでわずか2例にすぎず、各セッションの中にも見つけることは難しかった。日本より非定型抗精神病薬の歴史が古く、使用薬剤も豊富な米国MDアンダーソンのSherman医師は、精神病症状だけでなく不安に対する急性期治療において非定型抗精神病薬の有用性を報告し、さらなる可能性を示唆していた。それとは対照的に会場で意見交換をしたリトアニアの医師たちは、医療経済の問題から使用できる薬剤が限られており、QOLを目指した薬物療法の難しさを日々の臨床で抱えていると切々と話されていた。経済的問題に左右されること無く薬物の選択が可能である日本においては、予想することのできないコメントであるが、国際会議ならではの国際色の違いを感じる良い機会でもあった。さらに最終日のPlenary Sessionでは、MDアンダーソンのBruera教授による実際的な緩和医療、特に疼痛マネージメントの重要性を述べた講演を拝聴し、その内容だけでなく情熱が伝わる講演に、なりやまぬ拍手をおくったのは私一人ではないようであった。