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広島大学大学院精神神経医科学
萬谷智之
このたび、2004年8月25日−28日にかけて、デンマークのコペンハーゲンで開催されました第7回world congress
of psycho-oncologyに参加させていただきましたので、本誌面を借りて印象に残った発表などを報告させていただきます。
本大会は7つのプレナリーセッション、40のシンポジウム(一般演題の口頭発表)、9つのワークショップ、一般演題のポスター発表などを中心に構成されておりました。
今回は本会議に先行して3日間9つのワークショップが開催され、すべてが最低全日(9:00〜16:00)、長いものは2日間にかけて行われるという力の入れようで(私は、IPOSの参加は二度目なのですが、前回(メルボルン)は本会議の合間に2〜3時間のものがあった程度で、数ももっと少なかったように思います。参加者に配布されたプログラム冒頭のPresidentのあいさつ文でも今回ワークショップに力を入れたことが強調されていました。)、今回はそちらの印象の方が強かったので、ワークショップの話を中心に紹介させていただきます。
私はまず初日にDr. Baider(Hadassah大学)のPsychosocial intervention with couples
with cancerに参加しました。がん患者夫婦に関する総論的な話の後、Baiderらが行っているがん患者夫婦グループを対象とした心理的介入の実際の紹介がありました。介入は10セッションで、それぞれ、1)introduction,
2)trajectory of illness, 3)family roles of adaptation, 4)communication
within the family, 5)social network, 6)meaningful events, 7)body
image, 8)reorganizing priorities, 9)health care team, 10)sharing
giftsというテーマで、がんが夫婦に及ぼす影響について話し合われます。毎回セッションの終わりにhome workが出され、セッション間にも夫婦で話し合ったり、課題を実行したりすることが促され、次回のセッションでその結果も話し合われます。詳細は省略しますが、全体として疾患によってもたらされた精神面・身体面・生活面の変化に対して、個人ではなく夫婦として取り組むこと(自己紹介から「私たちは...」と紹介させ、いかにそれが意外にできていないかを気づかせることから始める)が強調され、そのために意識してコミュニケーションをとること、夫婦でささやかではあるが意味のある体験を共有する新たな習慣をもつこと、互いに感謝を表現すること、などが促されます。最後には逸話を使って治療者自身のメンタルヘルスを保つことの重要性も強調され、負荷の大きいがん医療の現場で働く参加者達の共感を呼んでいました。がん患者夫婦において互いを気遣うがためのconspiracy
of silence(暗黙の了解)が夫婦双方の心理的負荷を高めていることはこれまでの家族研究でよく知られていることですが、それに対する具体的な取り組みをexpertから直接聞けたことは非常によい体験となりました。また、3日目にはSloan-kettering
cancer center精神科のDr.BreitbertとMarkey cancer center精神腫瘍・緩和ケア科のDr.PassikによるPalliative
careのワークショップに参加しましたが、これも充実した内容でした。まず、両講師 (主にDr.Passik)によるpalliative
careの定義・現状に関する総論とpain,fatigue,deliriumなどの症状コントロールのreviewが行われました。多くの最新の知見を含む詳細な内容でしたが、あらためて日本で認可されていない薬が多いことにも気づかされました。その後「症状コントロールは必須であるが、加えて症状コントロールを越えたアプローチが求められている」ことが強調され、お目当てのDr.Breitbertによる
Meaning Centered Group Psychotherapyの話に移行しました。Breitbertはspiritual
painの一つHopelessnessに着目し、Hopelessnessは文字通りのHopeが欠如した状態ではなくHope for
cureが失われた状態であり、そのためのanticipatory griefとして概念化されること、そのgriefをしっかり認識した上でHope
for meaningという新たな形のHopeを目指すことが大切だと指摘しました。その後Franklのlogoherapyに基づいたMCGPの概略を紹介しましたが、8セッションの全てにわたって、logotherayの理論に沿って丹念にmeaningの供給源を探り、参加者が新たなHopeを見出していく様子が伺えました。また現在進行中のRCTの中間解析として「自分の人生はまだ意味がある」と答えた人の割合が介入前の60%
から介入後には100% になったという驚くべき数字も示されました。
本会議では私は"Factors related to anxiety in women with breast cancer
and their husbands: relationship between anxiety and alexithymia"というポスター発表をしたのですが、現在デンマークでがん患者を対象として様々な心理社会的因子と予後との関連を調べる大規模な前方視研究が進行中であり、そのbaseline因子の一つとしてalexithymiaが含まれているという話が会場で聞けたのは大きな励みとなりました。
今回は、先に紹介したワークショップの日本からの参加者は私を含めてBaidarが1人、Breitbertが2人と会場におられた参加者の数に比べるとややさみしいものでした。他のワークショップの参加者の印象でも充実した内容だったという方が多く、英語力のない私でもけっこう楽しめましたので、次回以降、興味あるテーマがみつかった方は是非一度参加してみられてはいかがでしょうか。
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