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名古屋市立大学大学院医学研究科
精神・認知・行動医学
明智龍男
本年5月13−14日にかけて福岡の地で開催されました第17回サイコオンコロジー学会総会において、一般演題1「症例」のセッションの座長をつとめさせていただきましたので、4題の発表演題の概要および会場で交わされた質疑等につきましてご紹介させていただきます。
京都府立医科大学の國澤先生らのグループは、悪性リンパ腫によりもたらされた下肢麻痺を否認し続けたままお亡くなりになられた若年女性の患者さんに精神科医として関わられた経験をご紹介されました。國澤先生らは、否認が前景にたつ終末期の患者さんへの心の問題への対応の難しさを紹介されるとともに、否認が果たす役割についても言及されました。
松尾内科病院の金沢先生らのグループは、当初未告知であった高齢の女性進行膵がんの患者さんが、ご家族からの申し入れなどのプロセスを経て、診断病名の開示を受け、その結果、患者さんから無用な延命拒否および尊厳ある死を望む申し出があった症例をご紹介されました。本報告では、患者さんとご家族、医療スタッフが、この真実を共有するプロセスを経て、精神的な安寧が得られた経過が紹介されました。
昭和音楽大学の久保田先生らのグループは、化学療法施行中に重篤な低酸素脳症になられた患者さんのご家族が、患者さんに対する音楽療法を通じて、モーニングワークを行っていった6ヶ月間の経過についてご紹介されました。本報告では、患者さんに対する音楽療法の提供が、ご家族にとってのリラクセイションのみならず、患者さんとご家族の時間の共有という効果をもたらし、ご家族にとっての死の受容を援助した可能性が示唆されました。
岩手県立大学の佐藤先生は、サイモントン療法を応用したプログラムを卵巣がんの患者さんとそのご家族に提供された試みをご報告され、本プログラムががんの患者さんの健康回復の過程を援助することに有用である可能性を示唆されました。
これら発表に対して、フロアからは、活発な質問あるいはコメントが寄せられました。これら質問、コメントとしては、個々の報告における援助技法に関する、より詳細な情報を求めるもの、患者さんを個として、あるいは一人の人として支えることの難しさ、あるいはその意義などに言及するものが多くみられました。中でも、フロアから寄せられた「患者さんを一人のかけがえのない個として尊重することが何よりも重要なことである」というコメントに本セッションの意義が集約されていると感じました。さらに、本セッション全体を通して私自身が感じた点は、個々の症例を詳細に検討するプロセスは、個別性に重きを置いた臨床に密着した有意義な議論の場となりえるということでした。限られた時間では、ディスカッションが十分に行えない面もありましたが、貴重な時間が演者とフロアの参加者の方々の間で共有できたのではないかと感じました。私自身、また次回学会で、事例の詳細な検討から多くを学ばせていただくことを楽しみにしております。
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