News Letter No.38 - Aug 2004 -
 
  学会印象記 
第9回日本緩和医療学会総会印象記

国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部
秋月伸哉


 6月17-18日に札幌で開催された第9回日本緩和医療学会総会に参加させていただきました。2日とも天候に恵まれ、北海道の気持ちのいい陽気の中、学会が行われました。個人的には、初日はほとんど研究ミーティング、ガイドライン作成委員会、緩和ケアチーム検討委員会などの裏メニューに参加していました。裏メニューの一つである緩和ケアチーム検討会は、前回の緩和医療学会で結成された会であり、緩和ケアチームを運営している方々や、チームを持つことを考えている方々で希望する人すべてが委員となり、メーリングリストに参加し、緩和ケアチームの問題点についてディスカッションを行うための会です。今回は2回目の顔合わせとなり、前回に増して多くの方々が全国各施設から参加しました。委員会ではまず、今年の1月にメーリングリストを通じて行われた緩和ケアチームの実態と問題意識の調査に関する発表が筆者より、聖隷三方原病院における緩和ケアチームの立ち上げの2年の試行錯誤に関する発表を、同病院の森田達也先生から行われました。いくつかのテーマが話し合われましたが、要約すると、同意に関する問題:緩和ケアチームの介入に関する同意の際、病状を十分に理解されていない症例や、理解していてもがんや緩和という言葉を使うことに抵抗のある症例などについてどのように対応するか、緩和ケアチームの診療範囲:チームが処方を行うか、主治医へのトレーニングをどのように考えるか、適応外処方の取り扱い、が主なテーマでした。あまり公に言えないことも含めて、様々な意見や現在の対応などが提示されましたが、患者の意向や状況に応じてフレキシブルに対応、主治医の意向、患者の状態に応じてフレキシブルに対応、地域ごとに対応が違うため、少なくとも所属施設長に納得してもらうこと、が妥当な対応として提案されました。全体として、現在は保険診療請求の枠や、システムの枠にとらわれず、患者や医療者の意向に応じて、試行錯誤を繰り返しながらも緩和ケアチームとして役に立つことを行っていくべき時期なのだろうという意見が主流でした。
 2日目に興味を惹かれたセッションとしては、苦痛緩和のための鎮静に関するパネルディスカッションで、ガイドライン総括と身体症状に関して森田達也先生から、終末期の抑うつとせん妄について明智龍男先生から、治療抵抗性の精神的苦悩について林彰敏先生から、看護の役割について岡田美賀子先生から、鎮静の薬物投与プロトコールについて池永昌之先生から、それぞれの立場からの鎮静についてのエビデンスと、それに基づく医療をどのように行うかについての発表が行われました。特に精神科医としては、明智先生の「予後2-3週未満の時期のうつ病の治療可能性は現時点においては低く、うつ病を心の激痛と捉えれば、一定の条件下では、鎮静も症状緩和の一方である可能性がある」とする発表は、衝撃的なものでありフロアからの議論も活発に行われました。今後、終末期の抑うつの臨床、研究の方向性に関して、重大な示唆を与える発表だったと感じました。
 来年は、横浜でサイコオンコロジー学会との合同大会が行われる予定です。緩和ケアチーム診療加算のシステムも導入されてから2年たち、各施設でサイコオンコロジストが緩和医療の中でどのような役割を果たしているのか、今後果たすべきなのかという議論もより重要性を増してきました。来年は是非皆さまと合同大会を盛り上げていきたいと思います。それでは、横浜でお会いするのを楽しみにしております。