| 緩和ケアにおける他者評価尺度 −STAS日本語版とクリニカル・オーディット− |
東京大学成人看護学/ターミナルケア看護学
宮下光令
心身ともに脆弱な状態にある終末期がん患者や家族の身体・心理的状況を測定することは、その負担の大きさから困難を伴うことが多い。このような場合、信頼性・妥当性の保証された他者評価尺度が求められる。
STAS(Support Team Assessment Schedule)とは英国のProf.Higginsonにより開発された、ホスピス・緩和ケアにおける評価尺度のひとつであり、この領域ではおそらく唯一の日本語版が存在し、信頼性・妥当性の検証が行われた他者評価尺度である。翻訳作業はSTAS
Working Group Japan(責任者:的場和子)により行われ、厚生労働科学研究・志真班によって信頼性・妥当性の検討が行われた。
STASは主要項目として「痛みのコントロール」「症状が患者に及ぼす影響」「患者の不安」「家族の不安」「患者の病状認識」「家族の病状認識」「患者と家族のコミュニケーション」「医療専門職間のコミュニケーション」「患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーション」の9項目からなる。「症状が患者に及ぼす影響」の項目を活用することにより、様々な症状が患者の日常生活に与えるインパクトを測定することも可能となる。わが国でも既にSTASを使用した臨床研究が進行中である。
STASは英国の緩和ケア領域におけるクリニカル・オーディットのために開発された。クリニカル・オーディットとは系統的な自己評価活動を指す。例えば、病棟におけるケアや緩和ケアチームなどの活動において、医療者が定期的にSTASの得点をつけることにより、患者・家族に負担をかけず現在の状況について全体的なアセスメントを行い、その結果の集計を行うことによりアウトカムに基づく活動の定量的な自己評価を行うことができる。
STASは他者評価尺度であるから、評価の際に若干のトレーニングを要する。そのために、日本語版STASスコアリングマニュアルと題した小冊子が用意されている(以下のホームページからダウンロード可)。本マニュアルには、STASの項目の詳細な説明、Q&A、信頼性研究に使用した仮想症例などが掲載されている。
今後、STAS日本語版が国内で使用され、何らかの変更や問題点などが出てきた場合、以下のホームページに掲載される予定である(既に一部訂正あり)。最新版の日本語版STASもPDFファイル、Wordファイルでダウンロードすることができる。STASはまだ日本語版の作成がされたばかりであり、実際の適用には十分な準備や工夫が必要かもしれない。実際に研究・臨床に使用されたら、是非、その経験をフィードバックしていただき、今後の発展につなげていきたいと考えている。STAS日本語版のホームページ
http://plaza.umin.ac.jp/~stas/
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