| サポートグループのファシリテーターを体験して気付いたこと |
聖路加国際病院
中村めぐみ
聖路加国際病院看護部が主体となって実施しているがん患者のためのサポートグループは、がんと共に生きている人々(cancer survivor)が抱えるストレスの低減を図り、コーピング能力を向上させることを目的としている。このプログラムの特徴は、情報提供に留まらず、グループ精神療法の効果を参加者が享受することに重点を置いている。従って、参加者10名程度の閉鎖型とし、グループ内にファシリテーターとサブファシリテーターが加わる。
ファシリテーターのトレーニングとしては、精神看護専門看護師を交えた文献学習、毎回のセッション終了後にグループダイナミックスや参加者の言動の意味を振り返り、各々の気づきなどを出し合うことを続けている。
そこで、ファシリテーターの体験をとおして気づいたこと・学んだことを紹介したいと思う。
まず、白衣を脱いで参加者の輪に加わると、最初は緊張し居心地の悪さすら感じる。グループの中で自分をどう位置づけ、どう処せばよいか戸惑ってしまう。白衣のパワー、それが看護師―患者関係の枠の規定効果を持っていたことに気付かされる。
次にファシリテーターの役割であるが、スピーゲル1)は「グループをよく観察し、ある感情の兆候を見つけ、本人がその感情を言葉にして表出できるように励まし、グループで共有できるようにすること」の重要性を掲げている。しかし表出される感情は不安・疑念・怒り・悲嘆などの陰性感情である場合が多い。いざこのような感情を表す言葉を耳にすると、医療者=専門職者として何か答えを返さなければという意識が働き、即座に説明をしたり時には弁解をしたくなる。答えに窮すと無力感に苛まれ、沈黙が重圧になり、回避的・防衛的な態度に傾いてしまう。
しかしここでやらねばならないのは、我々が答えを示すことではない。まずよく聴き、その感情を認め、関心をもってより深く探り、理解しようとすることである。このようなプロセスで我々も同様に素直な感情を示すと、「わかってもらえた」と認識され、怒りが低減したり、医療者との信頼関係の再構築につながることがある。また感情表出を促すためには、率直に訊く(尋ねる)ことが大切なのである。
ファシリテーターの役割のもう一つの要点は、患者と医療者との対話で終わらせないように、参加者同士での支持的な相互作用を促すことである。グループの凝集性が高まると、体験や感情を分かち合い、受け入れられ、色々な情報やアイデアを交換し、対処方法を見出し、互いに支え合う関係を築いて行く様子が認められる。
サポートグループのファシリテーターを務めることは、今や自分にとって最大のコミュニケーションスキルのトレーニングとなっている。
引用・参考文献
1)D.スピーゲル・C.クラッセン(朝倉隆司・田中祥子監訳):がん患者と家族のためのサポートグループ,医学書院,2003.
2)I.D.ヤーロム・S.ヴィノグラードフ(川室優訳):グループサイコセラピー,金剛出版,1991.
|