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国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部
中谷直樹
がん患者の心理的要因が予後に影響するとの仮説が立てられ、これまで多くの研究が行われている。その関連を検討した最初の研究は、Greerら
(1979) の研究である1)。彼らは、69例の早期乳がん患者に対し、心理的反応 (自分自身のがんの受け止め方) を評価し、さらに5年間の追跡調査を実施した。心理的反応は、4つのカテゴリー
(Denial: 否認、Fighting spirit: 闘争心、Stoic acceptance: 冷静に受けとめる態度、Helplessness/Hopelessness:
無気力・絶望感) に分類される。追跡調査の結果、否認及び闘争心の心理的特徴を有する者は、冷静に受け止める態度及び無気力・絶望感の心理的特徴を有する者に比し、生存率が有意に延長した。この結果は、10年間、15年間の追跡調査においても同様の結果を示した。一方、近年、Greerの高弟であるWatson
(1999) は、578名の早期乳がん患者に対して追試を行い、前向き研究において、Fighting spirit及び Helplessness/Hopelessnessと予後に関する追跡調査を行った2)。その結果、Fighting
spirit及びHelplessness/Hopelessnessは、がん患者の予後に影響しなかった。Petticrewら (2002)
は、 最近の研究について系統的レビューを行った結果、Fighting spirit 及び Helplessness/Hopelessness が予後に影響するといった一致したエビデンスは現段階では見られないと報告し、さらに「現時点では、特定の性格や取り組み方を推奨できない」
とし、「暗い人が無理して明るく努めるようプレッシャーを感じる必要はない」 と結論付けている3)。
また、Eysenckが開発したパーソナリティ指標とがんの予後と関連が指摘されている。これまで3件の報告があり、2件でその関連が示されており、Lie
scale (社会的望ましさ) の高スコア群及びExtraversion (外向性傾向) の低スコア群のがん患者では、予後が有意に悪化した4,5)。しかし、他の1件では、Eysenckが開発したパーソナリティ指標とがん患者の予後との関連は認められなかった6)。がん患者のパーソナリティと予後の関連は未だ議論されている。
現在、著者らも、がん患者の心理的要因と予後の関連について、前向きコホート研究により検討している。その詳細なメカニズムを解明するためにパーソナリティ
(EPQ-R: The Eysenck Personality Questionnaire-Revised)、態度 (MAC:
The Mental Adjustment to Cancer)、生体指標 (尿中24Hコルチゾール)、感情状態、ライフスタイル等に焦点を当てている。今後、サイコオンコロジストの課題として、がん患者の心理的要因とがんの予後の関連を究明することと同時に、わが国のがん患者に正確且つ分かりやすく情報を提供することである。その1つの方法として、多くの知見をその都度批判的に吟味し、その評価結果をガイドラインに反映して情報提供することが重要である。
1.Greer S, Morris T, Pettingale KW. Psychosocial Response to breast
cancer: effect of outcome. Lancet 1979; ii: 785-7.
2.Watson M, Haviland JS, Greer S, Davidsin J, Bliss JM. Influence
of psychological response on survival in breast cancer: a population-based
cohort study. Lancet 1999; 354: 1331-6.
3.Petticrew M, Bell R, Hunter D. Influence of psychological coping
on survival and reccurence in people with cancer: systematic review.
BMJ 2002; 325: 1066-75.
4.Ratcliffe MA, Dawson AA, Walker LG. Eysenck Personality Inventory
L-scores in patients with Hodgkin’s disease and non-Hodgkin’s lymphoma.
Psycho-oncology 1995; 4: 39-45.
5.Hislop TG, Waxler NE, Coldman AJ, Elwood JM, Kan L. The prognostic
significance of psychosocial factors in women with breast cancer.
J Clin Epidemiol 1987; 40: 729-35.
6.Dean C, Surtees G. Do psychological factors predict survival in
breast cancer? J Psychosom Res 1989; 33: 561-9.
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