| 同種造血幹細胞移植患者におけるクラス100クリーンルーム入室中のストレス要因に関する検討 |
市立泉佐野病院(現 和歌山県立医科大学付属病院)
山田 忍
市立泉佐野病院
西村直美
[目的]同種造血幹細胞移植患者のクリーンルーム入室期間は感染や幹細胞の定着、増殖の状況により長期になることがあり、怒りを看護者にぶつけるストレス対処と考えられる行動が実体験として感じられている。ストレッサーが生活の中での大きな出来事よりも日常的な慢性的不快の蓄積のほうが健康状態との関連が強いとされているように、移植患者にとってクリーンルームは日常的な環境であり、クリーンルーム入室が患者のストレスを増強させることは先行研究でも明らかになっている。ストレスの内在は病気への適応や治療効果の遅延を引き起こす要因になりうる。本研究では、クラス100クリーンルームに入室治療後の患者へのインタビュー調査から具体的なストレス要因を明らかにすることを目的とした。
[調査対象と方法]I市民病院血液内科病棟で同種造血幹細胞移植治療を受けた患者で、本研究に同意を得られた患者7名を対象に平成15年6月から8月末までの期間、TKJ法を用いて作成した半構成的質問項目を用い60分のインタビュー調査をおこなった。テープに録音後逐語記録し内容をカテゴリー化し因子名をつけた。
[結果]対象患者は男性3人・女性4人であった。年齢は平均40.0歳、悪性リンパ腫3人・慢性骨髄性白血病2人・急性骨髄性白血病2人であった。平均在室日数は17日、1日平均下痢回数は8回であった。「同種造血幹細胞移植患者のクラス100クリーンルーム入室中のストレス要因」は、17項目・5因子が抽出された。内容は、ほしいものがすぐに取れないことや外の景色が見えにくいなどクリーンルームの内部構造に関しての「環境ストレス」、採血や口内炎の苦痛に対しての「身体的ストレス」、白血球の定着や全身の倦怠感がいつまで続くのかといった「予後ストレス」、倦怠感がある中で清潔を保つためには治療に協力しなければならないといった「自己管理ストレス」、付き添いをしてもらえないことや子供に会えないという「面会制限ストレス」であった。
[考察]クリーンルームの内部構造へのストレスである「環境ストレス」においては、景色やテレビが見えにくいなどの具体的内容は予測していなかった。長期に臥床した状況からの患者のストレスとして受け止める必要があると感じられた。ほとんどの患者が入室中下痢症状を訴えており、オムツ着用を強いられたと感じていた患者もあった。移植患者はADLが自立している状態から入室しており、下痢による失禁が自尊心にかなりのダメージを与えるものと考えられる。入室前から環境や病状の変化を患者がイメージできるように具体的な説明を行っていく必要があると考える。「自己管理ストレス」に関しては、看護者は感染を極力避けるために入室しない方法として患者への自己管理を依頼していた場面が多く、このことが患者のストレスになっていたことを本研究で改めて認識できた。現在はクリーンルーム入室の簡略化が進められ、患者サイドでのケアが容易になってきている。患者の身体的な変化を考慮し看護者から積極的に看護介入していく必要があることが示唆された。
[参考文献]
1.監修 日野原重明 井村裕夫,監修協力 岩井郁子 北村 聖,編集 北村 聖
看護のための最新医学講座 第9巻 血液・造血器疾患 中山書店 2001
2.上野栄一,森本久美子,島田葉子他 セミクリーンルーム入室患者と多床室患者のうつ状態とストレスとの関係 臨床看護 1996 22(11),pp1681‐1688.
3.原麻衣子 無菌室に入室する患者のストレス状況の探求−情動反応と行動反応に焦点を当てて 日本看護研究学会雑誌 1997 20(4),80.
4.Steptoe & WardleJ,eds.Psychologicalprocesses and heaith.Cambridge:Cambridge University Press,1994.
5.多二郎 KJ法 渾沌をして語らしめる 中央公論新社 1986.
6.Lazarus,R,S,Puzzles in the Study of Daily Hassles.J.Behav.Med.7:pp375−389,1984.
7.斉藤 勇 感情と人間関係の心理その25のアプローチ 川島出版 1986 p192.
8.松田光信 無菌室で生活する患者に対する看護婦・士の精神的ケア 日本看護科学学会誌 J.Jpn.Acad.Nurs.Sci.,Vol.21,No.2,pp.64−73,2001.
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