News Letter No.38 - Aug 2004 -
 
  Journal Club 
がん患者に対する親しいパートナーから3つのサポート提供方法 :積極的関与、保護的緩衝、過保護

大阪大学大学院人間科学研究科
塩崎麻里子


Active engagement, protective buffering, and overprotection: Three ways of giving support by intimate partners of patients with cancer
Kuijer RG, Ybema JF. Buunk BP, Thijs-Boer F,& Sanderman R..
Journal of Social and Clinical Psychology, 2000, 19(2)256-275
【背景と目的】がんの治癒率、生存率が飛躍的に向上した現在において、術後のがん患者は多くの時間をがんと共に過ごすことになった。そこで重要になるのが、多くの場合親しい他者からのサポートである。欧米では、親しい他者からの患者へのサポート提供方法として、積極的関与・保護的緩衝・過保護の3つのスタイルが提唱されている。本研究では、がん患者に対して親しい他者によって提供される3つサポートスタイルの決定要因と影響について、患者と親しい他者の両者の視点から検討した。
【方法】対象は、がん患者(59±11.5歳、33-83)と親しい他者(58±11.5歳、22-85)106名であった。親しい他者として挙げられたのは95%が配偶者、残りの5%が同棲相手であった。患者の30%に転移がみられた。関係の平均継続期間は、32.5±12年であった。郵送による質問紙調査が行われ、両者共に返却された有効回答率は63%であった。
【結果】患者や疾患の属性と親しい他者の認知的変数が、親しい他者の患者へのサポートスタイルを決定し、それを患者がどのように受け取るかが、患者の心理的変数に影響を及ぼすというモデルが検討された。サポート提供スタイルに関する両者の回答には、中−高程度の相関がみられた。患者の性別、年齢、予後予測は、両者の報告したサポート提供スタイルと関連が見られた。「患者の疾患への対処に関する評価」が高い親しい他者は積極的関与を用い、その評価が低い他者は過保護を用いていた。また、「患者へのサポート提供に関する自己効力感」が高いと積極的関与を、低いと保護的緩衝を多く用いていた。患者の心理的変数への影響に関しては、患者が親しい他者のサポート提供スタイルを積極的関与と評価しているほど、罹患したことで二者間の関係性が改善したと報告していた。また、過保護と評価しているほど、患者の心的苦痛が増え、コントロール感が下がることが示された。
【考察】親しい他者の「患者の疾患への対処に関する評価」と「患者へのサポート提供に関する自己効力感」は、患者に提供するサポートスタイルに影響を及ぼし、それをどのように患者が受け取ったかが、患者の心的苦痛と関係性改善感に影響を及ぼしていた。患者にとって親しい他者からのサポートは重要であり、臨床的介入は患者と親しい他者の両方を対象になされるべきことが示唆された。