| 在宅ケアを受ける末期がん患者の在宅死の予測要因の検討:全国調査の実施 |
東京都立保健科学大学
福井小紀子
Sakiko Fukui, Naoshi Fukui, Hiromi Kawagoe. Predictors of place
of death for Japanese patients with advanced-stage malignant disease
in home care settings: A nationwide survey. Cancer. 2004:15;101:421-9.
【目的】欧米では、大多数の末期がん患者の死亡場所に対する希望と実際に大きな隔たりが存在することから、ここ20年間に在宅死を実現するための要因を探る大規模調査が数多く行われてきた。しかし、これまでの研究は、在宅死の関連要因として、患者の状態および医療専門職や家族介護者による在宅での具体的な支援内容を含まず、かつこれら要因の時間的変化が加味されていないことが、近年の複数のレビュー論文で指摘された。そこで、本研究では、これらの要因を包括的かつ経時的に含む在宅死の予測因子を検討することを目的とした。
【方法】全国訪問看護ステーション259ヵ所にて、在宅ケアを2週間以上受けた428例の末期がん患者について、ケアを担当した看護師を対象に質問紙調査を実施し、在宅死の関連要因を検討した。質問項目は、在宅ケア開始1週間(導入期)、ケア開始2週から死亡前2週まで(安定期)、および死亡前1週間(終末期)の3時期それぞれに関して、1)患者関連要因(基本属性と身体・心理状況)、2)家族関連要因(介護者の役割と身体・心理状況)、および3)医療職関連要因(支援内容と医療体制)とした。
【結果】在宅死した患者は導入期285名(67%)、安定期264名(65%)、終末期281(82%)であった。単変量解析にて在宅死の実現に有意な関連(p<.01)を示した要因のうち、ロジスティック回帰分析にて最終的に在宅死と有意な関連を示した要因は、1)患者関連要因:在宅ケア期間中に再入院をしていないこと(odds
ratio [OR], 95% confidence interval [CI]: 40.11/11.81-136.26)、終末期の患者の身体機能レベルが低い(寝たきりである)こと(OR,
95%CI: 11.10, 2.83-43.52)、2)家族関連要因:家族が在宅ケアを希望していること(OR, 95%CI:3.45,
1.25-9.53)、安定期の家族の心理負担が低いこと(OR, 95%CI: 5.41, 1.13-25.92)、終末期に家族による排泄ケアが実施されていること(OR,
95%CI: 7.73, 1.66-35.90)、安定的に家族による点滴管理が行われていること(OR, 95%CI: 6.56,
1.19-36.22)、3)医療職関連要因として、訪問看護師による訪問回数が導入期に3回以上(OR, 95%CI: 3.78,
1.09-13.07)、終末期に5回以上(OR, 95%CI: 8.65, 2.39-31.39)であること、安定期に看護師により患者の死亡場所についての家族の希望が確認されていること(OR,
95%CI: 6.66, 1.30-34.02)、終末期に看護師により家族に対して死や死までの経過に関する説明が行われていること(OR,
95%CI: 12.46, 1.07-44.83)の計10項目であった。本モデルによる在宅死の説明率は94%と欧米の先行研究に比べて高い値が示された。
【結論】本研究の結果から、がん患者が在宅ケアを受けて在宅死を迎えるためには、患者の状態変化への考慮とともに、在宅ケアに関わる家族および看護師によるタイムリーなケア提供の重要性が示された。我が国を含むアジア各国では、末期がん患者に対する在宅ケアが欧米諸国に比べて立ち遅れていることが指摘されているが、在宅死を望むがん患者に対する具体的支援内容を考え、そして我が国の末期がん在宅ケア体制を整えていく上で、本研究は有用な知見を示したと言える。
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