News Letter No.38 - Aug 2004 -
 
  Journal Club 
「臨床試験におけるインフォームド・コンセント(IC)」

岡山大学医学部保健学科
高山智子


1) Brown RF., et al., Seeking informed consent to cancer clinical trials: describing current practice. Social Science & Medicine 58, 2445-2457, 2004.
2) Brown RF., et al., Developing ethical strategies to assist oncologists in seeking informed consent to cancer clinical trials. Social Science & Medicine 58, 379-390, 2004.
 治療評価のゴールドスタンダードとみなされている臨床試験は、今やEBMにおいては欠かせないものとなっている。しかし医師や患者の多くは、臨床試験について話をすることに困難を感じ、ICそのものの質の低下(情報提供が不十分、患者は理解していない等)を招いている。
 Brownらは、このように困難な臨床試験下で行われるコミュニケーション・プロセスをサポートし、倫理的なICを保証する系統的で最適なコミュニケーション内容やプロセスはどのようなものかを定義するため、Phase2、3における臨床試験のコミュニケーションの類型化を行った1)。同グループがこれまでに蓄積したオーディオ録音された臨床試験場面を質的に分析した結果、4つの主要なテーマがあげられた。一つ目はa)shared decision-makingである。医師が協働的な意思決定を実践するための14の具体的な方策(一緒に意思決定を行うことを伝える、患者の情報の好みを確認する等)を活用しやすい形で示している。2つ目のb)「情報の流れ」では、まず標準治療について言及した後に試験の選択肢を示す、というように、臨床試験についてどのような流れで話すのが適切かについて示している。c) 「情報の種類と明確さ」では、通常倫理的なICとして、試験の目的や倫理委員会の承認下で試験が実施されていること等が患者に伝えられるが、これらが実際には単に儀式的に行われていることに触れ、患者の理解を最大限にし、回想出来るような明確な情報提供が必要であるとしている。4つ目のd)「情報開示と強制」では、威圧的な状況下でICを行うことを避けるため、筆者らは、威圧的でなく治療の選択肢を示す説得力のある方法の必要性を主張している。
 さらに、この類型をもとに実際の臨床試験で倫理的なコミュニケーションがどの程度行われているかを検討したのが、2)の論文である。10名のオンコロジストの59診療について検討した結果(なおこの研究は、コミュニケーション・スキル・トレーニングの有効性に関する大規模研究の一部であり、10名のオンコロジストはこの時点ではトレーニングを受けていない)、ほとんどの医師がshared decision-makingを行っておらず(9-61%)、質的にも理想的なICからはかなり劣る評価であった。倫理的に必要な情報(診断結果と病期、治療選択肢がないこと、標準治療とその利点など)についても19-70%で話されているに過ぎなかった。これは、臨床試験における倫理的なICがいかに難しいものであるかを反映するものである。今後の同グループのコミュニケーション・スキル・トレーニングの検討結果が楽しみである。