| 転移のある乳がん女性患者に対する心理的介入(コクランレビュー) |
独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター
精神科神経科
松原良次
Psychological interventions for women with metastatic breast cancer.
Edwards AGK, Hailey S, Maxwell M. The Cochrane Library, Issue 2,
2004.
【背景】早期の乳がんに対する心理的介入試験は広く行われているが、転移のある乳がんに対するものは少ない。初期の1試験で心理的効果とともに生存期間に対する有意な効果が示されたが、その後のいくつかの試験では相反する結果となっている。
【目的】転移のある乳がん女性患者に対する心理的介入の心理的効果と生存期間に対する効果をメタ解析により検討する。
【調査方法】Cochrane Breast Cancer Group Trials Register、Cochrane Central
Register of Controlled Trials、MEDLINE、CancerLit、CINAHL、PsycInfo、SIGLEにより調査した。
【選択基準】転移のある乳がん女性患者に対する心理的介入の無作為対照試験を採用し、転移のない乳がんや他のがんを含む試験は除外した。
【結果】5試験を採用、13試験を除外した。採用した5試験は全てグループ療法で、Cunningham(1998)、Edelman(1999)の2試験は認知行動的介入、Koopman(1998)、Spiegel(1989)、Goodwin(2001)の3試験は支持表出的介入であった。
心理的効果の評価には多くの試験がPOMSを用い、EdelmanとCunninghamは介入の効果を短期間で報告しているが、6ないし8か月後には持続していなかった。SpiegelとGoodwinの2試験は相反する結果で、Spiegelは介入の効果はあるとしたが、Goodwinはなかったとしている。Koopmanのデータはこのメタ解析には使用しなかったが、他の多くの試験と一致し有意な効果は得られていない。以上から短期間における心理的効果のエビデンスはあるが、総じてその後の追跡期間には持続していなかった。不安に対してはEdelmanとGoodwinの2試験において介入の効果にエビデンスはなかったが、痛みについてはSpiegelとGoodwinの2試験において効果のあるエビデンスが示されている。
生存期間に対する効果については、Spiegel の初期の1試験で介入群の生存期間の延長が報告されたが、この試験のメンバーによる1試験を含む他の4試験では追試できなかった。生存期間に対する介入の効果のオッズ比は、1年生存率で0.86(95%信頼区間0.32-2.3)、5年で0.83(0.36-1.98)、10年で0.78(0.28-2.37)と統計学的に有意ではなかった。
【考察】結果の相異は各試験の方法論的問題にもよるが、このレビューの一番の限界はデータが少なく介入による本当の効果の検出力に欠けていることである。今後は適当な検出力と一定の追跡期間をもつ試験による介入の心理的効果と生存期間に対する効果の両者の同定と、それらを評価する測定方法の標準化が重要である。
【結論】転移のある乳がん女性患者に対する認知行動的、支持表出的グループ療法は短期間では心理的効果があったが、長期間にわたる心理的効果と生存期間に対する効果にエビデンスはなく、心理的介入をこうした患者全員に行うべきであるというエビデンスには不十分である。またこのデータからは心理的介入が有害である可能性は除外されない。
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